にわか結婚式ごっこのようなことをしてご満悦な表情の雅紀はぶっちゅーーっとオレの頬にキスをしてから嬉々としてチャリにまたがって予備校へ走り去っていった。
花畑の真ん中に取り残されたオレは頬を押さえ、急いでワイシャツのボタンを閉めてネクタイも締め直してワタワタと診療所へ向かった。
そしてなんとなく掃除をしつつソワソワしていたけど診察時間になりシッポたちの対応に追われるうちにいつもの自分を取り戻していた。
昼休みになってから斗真や智くん、ニノに雅紀のお父さんとのことや相葉総合病院のことについて話をするとみんなが喜んでくれた。
これからは2人でしっかりやりたいようにやればいい。俺たちはいつでも力になるとそう言ってくれた。
雅紀の受験体制はいよいよ本格化する。
雅紀の誕生日もオレの誕生日も全部受験が終わってからやればいいだろうし、まだまだ楽しいことの前にやるべきことはある。
なにせ1年もの長い期間を浪人生として時間をくれた御家族のためにもしっかり合格キップを手にしないといけないんだ。
そんな雅紀のためにオレが出来ること…。
ただの神頼みと言われればそれまでかもしれないけど少しでも力になりたい。
診療所の帰りに学問の神様で有名な神社へ寄った。
努力家の塊のような雅紀を知っているはずなのに神頼みなんてななんて思う自分もいたけど、この際そんな事は言っていられない。
すがれるものには何だってすがってやる。
どうか。
雅紀に力を貸してください。
誰より努力を重ねてきた彼に力を貸してください。
絵馬に記入をし、お守りを買った。
さて。
このお守り…。
早く雅紀に届けたい。
アイツの手元に届けたい。
今日は19時まで講義があると言っていたな。
そう思い出したオレは急いで原チャに跨り予備校へ向けて走り出した。
そして講義が終わるほんの少し前に予備校に着いたオレは出口の前で原チャの椅子に座り足をぷらぷらさせながら愛しい人の帰りを待っていたんだ。