こぼれた涙をぐしぐしってしてから雅紀さんを起こした。で、なにやらふにゃふにゃな雅紀さんの腕を肩に回して2階のオレの部屋に敷いた布団に寝かせた。
ずっとずっと親の愛が欲しかった雅紀さん。
雅紀さん。父さんと母さんがそんな雅紀さんのことをちゃんと分かってるんだよ。そして雅紀さんも父さんと母さんの思いも分かっててくれてるんでしょ?
だからここに「帰る」って言ってくれたんだよね。
大の字になって寝てる雅紀さんの腕に頭を乗っけて胸にくっついた。
寝てるはずの雅紀さんがころんって向きを変えてオレを抱きしめてくれた。
「まさきさん?」
「しょぉ…んふふふふ…」
「ふふ。やっぱり寝てる…」
「しょぉ…ありが、と…」
雅紀さん。
こちらこそありがとうだよ。
なんか眠くなってきたオレは雅紀さんの胸のシャツをキュってして目を閉じた。
そんなオレらの様子を母さんが見に来てたなんて知らなかった。
母さんはふふって笑いながらオレのベッドから毛布を引っ張ってきて掛けてくれてたみたい。
朝になって目が覚めてからさっき掛けてなかったはずの毛布があることに気がついたから。
「おはよ、雅紀さん」
「翔、おはよ…俺…寝ちゃってた?」
「ふふ。父さんと酔いつぶれてた。父さんも母さんも嬉しそうだったよ」
「…あー、寝ちゃったかぁ…お父さんに失礼なことしたなぁ…」
なんてポリポリしながら雅紀さんが起き上がった。
オレはもう母さんたちも起きてるから行こうって雅紀さんにチュッてしてから雅紀さんと一緒に部屋を出た。
なんだか二日酔いでぐらんぐらんしてる父さんを見て3人で笑ってから雅紀さんが風呂に入った。
で、湯上りの色気ダダ漏れ雅紀さんを見て母さんがキャッキャウフフしてるし。んで、なんかちょっとムカつくし。
むううううってしてたら雅紀さんが頭をぽんぽんしてくれたけど。もう、雅紀さんは風呂上がりにリビングを歩き回るの禁止だかんな!!!
4人で朝ごはんを食べたら雅紀さんと一緒に診療所へ出勤だ。
「行ってきます」
「行ってきます」
「行ってらっしゃい」
「気をつけてな」
なんだかやり取りが嬉しい。
オレは雅紀さんが漕ぐ自転車にまたがると背中にぎゅうううってした。