『異人たち』暗鬱な孤独と過去との対峙が目眩くディープな世界
割と信頼できる知人が本作のことを褒めていたので、観る予定じゃなかったけど重い腰を上げてOSシネマズミント神戸へ。
我が家の黒猫コクトー、さすがに私の頻繁な外出にブチ切れたのか、久々に本気で狂犬のように噛みついてきたのだった
ロンドンのタワーマンションに暮らす40代の独身男性アダム。12歳の時に交通事故で両親を亡くして以来、孤独な人生を送っていた。脚本家の彼は現在、両親との思い出を基にした脚本を執筆していた。そのために両親と幼少期を過ごした郊外の家を訪ねた彼は、30年前に他界した当時と変わらぬ姿の父と母に再会する。一方、マンションの住人である謎めいた青年ハリーのアプローチを受けたアダムは、徐々に関係を深めていくのだが…
(いきなり)うーん…
どうして皆さんの評価が高いのか、私は観ている間中かなりキツかった。
原作の『異人たちとの夏』は山田太一の小説で、大林宣彦が1988年に映画化している。キャストは風間杜夫、片岡鶴太郎、秋吉久美子、名取裕子。
オリジナルは観ているのだけどほとんど忘れてしまっており、古き日本の夏の風情とか、鶴太郎の小ざっぱりと可笑しいキャラクターとか、秋吉久美子の可愛さとか、風間杜夫の普通で真面目そうな雰囲気がうっすらと残っている。
ただ、名取裕子のホラーなシーンはすっかり記憶から抜け落ちていて、もしかしたら自分の中で自然抹消したのかもしれない
で、リメイクはどうかというと、この風間杜夫と名取裕子の関係性をアンドリュー・スコットとポール・メスカルのゲイカップル in LONDON に置き換えているわけだ。
いきなり髭ゾリゾリでガッチリした体格の男たちのラブシーンを見せられても…ねえ。好みの問題なのだろうけど。
そして、オリジナルのからっとした調子(あくまでも記憶の中で。鶴太郎によるところが大きい気がする)に比べると、全編通して独特の暗鬱さが漂っていて、メンタルが不調の人にはおすすめできない感じなのだ。
しかも、アダムの過去からのゲイ問題における苦悩が作品の中心に深く介在しているために、亡くなった両親との逢瀬や過去との対峙にもその影響が濃厚に侵蝕している。
つまり、監督であるアンドリュー・ヘイが自身もゲイであることから本作に色濃く投影させており、原作の存在を強調しているものの、全然違うものに仕上がっているような印象を私は受けた。
でもって、彼らが暮らすタワーマンションにはアダムとハリーの2人しか住人がいないらしく、脚本家らしいアダムの周囲に他の人は誰も登場しないという、徹底的に閉じられた世界で展開する本作(すべてが彼の頭の中だけで完結していたとしてもおかしくない状況)。
超絶孤独な設定なのだが、このアダム、大丈夫なのだろうか?
すでに半分あの世に行ってるかのような…
これ以上は、メンタルの調子が良い時にご鑑賞のほどを。
(なぜかyoutubeが貼り付けられない状況なので、予告編は上記の公式HPからどうぞ)
ALL OF US STRANGERS
監督:アンドリュー・ヘイ
出演:アンドリュー・スコット、ポール・メスカル、ジェイミー・ベル、クレア・フォイ…
2023年/イギリス/105分
まだこなれていなくて何か書き忘れてる気がするので、ちょこちょこ追記修正に戻ってくると思う。
Bon Voyage★