『記者たち 衝撃と畏怖の真実』 | dramatique

『記者たち 衝撃と畏怖の真実』

公開当時、気になっていたものの劇場へ行かなかったロブ・ライナー『記者たち 衝撃と畏怖の真実』を、遅ればせながらWOWOWの録画で鑑賞(Amazonプライムビデオでも観れるみたい)。

 

こういった権力者の嘘と報道記者のせめぎ合いを題材に扱った作品が幾つも展開されてきた中で(『スポットライト 世紀のスクープ』、『ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書』…遡ると『大統領の陰謀』など)、本作は割とさらっとしてるというか、ドラマティックな抑揚があまりなくて、最初から事実関係がわかった上で「こんなことがありました」という報告を見ているような感じがした。

 

でも、面白くないわけではなくて、登場人物たち=記者たちが魅力的だし、苦手な国際情勢の勉強にもなる。

 

少し前に、クリスチャン・ベールが体を張って副大統領を、サム・ロックウェルがお馬鹿なジョージ・ブッシュ大統領を演じた『バイス』の記憶が生々しいものだから、本作の中に本物が映ったりすると、さらに理解が深まるというものだ。

 

なぜか上の人たちは戦争をやりたがり(本当に国を心配してるのか、頭が狂ってるのか?)、大統領とその取り巻きが変わる度に、対外関係も変わり、友好的になったかと思えば、険悪な状況に陥ってしまう。

 

 

(公式HPより)

2002年、ジョージ・W・ブッシュ大統領は「大量破壊兵器保持」を理由に、イラク侵攻に踏み切ろうとしていた。新聞社ナイト・リッダーのワシントン支局長ジョン・ウォルコット(ロブ・ライナー)は部下のジョナサン・ランデー(ウディ・ハレルソン)、ウォーレン・ストロベル(ジェームズ・マースデン)、そして元従軍記者でジャーナリストのジョー・ギャロウェイ(トミー・リー・ジョーンズ)に取材を指示、しかし破壊兵器の証拠は見つからず、やがて政府の捏造、情報操作である事を突き止めた。真実を伝えるために批判記事を世に送り出していく4人だが、NYタイムズ、ワシントン・ポストなどの大手新聞社は政府の方針を追認、ナイト・リッダーはかつてないほど愛国心が高まった世間の潮流の中で孤立していく。それでも記者たちは大儀なき戦争を止めようと、米兵、イラク市民、家族や恋人の命を危険にさらす政府の嘘を暴こうと奮闘する…

 

…という展開。

 

思うに、政府とそれを取り囲むメジャーな媒体に対して、マイナーな正義は結局リアルタイムでは敵わないし報われないところがあるのだけれど、地道な取材の中であれだけ内部告発が掬い取れるということは、核心に近い人々はみんな戦争にうんざりしていたんじゃないかなあ…と思う。

 

そして、何となくちょっと地味な印象の本作だけど、ロブ・ライナーがいい味出しているのである。こういう上司だといいな、と思わせてくれる。表情もお茶目だし、手の使い方も面白いし、優しそうな顔しててもハッキリ言うところは言うし…ついて行きたくなる熱血ボスだ。

 

大手の報道機関の忖度ぶりや情報操作に流されたいい加減な姿勢は、現在のジャーナリズムにもそのまま当てはまる。日本でも『新聞記者』やそのモデルになった女性記者のドキュメントも上映されたばかりだし、無念の長い歴史に、国民の皆もほとんどあきらめの境地のような気がしている。

 

それでも、本作の記者たちの努力と勇気は素晴らしい。報われなくても忘れてはいけない精神だし、こういう人たちが少しでも存在していてほしいと願うわけで、さらに、記事を読む側やニュースを見る側も、ただ受け身になったり長いものに巻かれるのではなく、疑問を持ち、わからないことは無関心にならず学んでいく必要があると今さらながら改めて思うのだ。

 

 

Shock and Awe

 

監督:ロブ・ライナー

出演:ウディ・ハレルソン、ジェームズ・マースデン、トミー・リージョーンズ、ミラ・ジョヴォヴィッチ、ジェシカ・ビール、ロブ・ライナー…

2017年/アメリカ/91分

 

映画『記者たち 衝撃と畏怖の真実』公式サイト

 


ウディ・ハレルソンを見ると、不謹慎ながらどうしても父親がマフィヤの雇われ殺し屋で母親が弁護士秘書だったというWikiのプロフィールが頭をよぎってしまう…きっと凄い恋愛ドラマがあったのかもねにひひ




ルナ氏「僕もそう思うよネコキリッ✨」



 

Bon Voyage★