『フォー・ウェディング』でヒュー・グラントの美貌と結婚式(とお葬式)を見る
テーマ:映画例によってお疲れ気味で、何となくWOWOWをつけてたら流れてきて、何となく眺めていたのだけれど…
久々に微妙な映画を見ました。どんな作品でも作るのはそれなりに大変だし(お前はどうなんだ?って話でもあるし)、どんな映画にも良いところはあるので、極力それを見つけながら書いてみたいと思います。
原題は、For Wedding じゃなくてFour Weddings and a Funeral (4つの結婚式と1つのお葬式)というタイトルなのですよね。それだけで違った雰囲気を感じません?
(ネタバレ全開だけど、まあ、いいか…)
ヒュー・グラント演じる主人公のチャールズは、女性にモテる32歳の独身男性。他人の結婚式にばかり出席しているが、自分の結婚については躊躇している。そんなある日、友人の結婚式に参列した際に、アメリカ人女性キャリー(アンディ・マクドウェル)と出会って惹かれ合い、一夜を共にするのだが、意思表示のすれ違いから一夜限りで終わってしまう。その後、再びチャールズは友達の結婚式でキャリーに再会するも、彼女には富豪の婚約者がおり、それでもまたベッドを共にし…
と、思いはありながら何度もすれ違い続けるのだけれど、この彼女、すぐに男性と関係を持つタイプなのだろうか。それとも、チャールズは特別気になる相手だったのか…。いずれにせよこれまでの男性体験を彼に語って聞かせたりして、どこまで本当かは知らないが、そこまで各々を深くは描かないまま話は進んでいく。
もしかしたら、チャールズにハッキリした態度でリードしてほしかったのかもしれない。が、彼女はとうとう結婚してしまい、その挙式途中でチャールズの友人の1人ガレス(ゲイの男性)が突然倒れて亡くなってしまう。
よくよく考えてみるに、一応、一般大衆へのヒットを狙ったラブコメ路線の体裁があるものだから、深刻に掘り下げはしないものの、急死したガレスのパートナーであるマシューが弔辞で詩を読み上げるシーンは、全編を覆う「どんだけ結婚式だらけなんだよ!」な中で、1つの問題を提起しているように思える。
(↓以下、ぐうたらちゃんのごろ寝で居眠りというブログから拝借しました↓)
Funeral Blues By W.H.Auden (哀悼のブルース W.H.オーデン)
Stop all the clocks, cut off the telephone, (時計を止めろ、電話を切れ)
Prevent the dog from barking with a juicy bone,(骨を与え、犬を黙らせろ)
Silence the pianos and with muffled drum (ピアノもドラムも鳴らすな)
Bring out the coffin, let the mourners come. (ひつぎを出せ、哀悼を示せ)
Let aeroplanes circle moaning overhead (飛行機を頭上で旋回させ)
Scribbling on the sky the message He is Dead.(メッセージを書かせろ「やつは死んだ」)
Put crepe bows round the white necks of the public doves,(ハトの白い首に喪章をつけろ)
Let the traffic policemen wear black cotton gloves. (警官は黒い手袋をはめろ)
He was my North, my South, my East and West,(やつは俺の北であり、南で東で西だった)
My working week and my Sunday rest, (俺の労働日であり、休息日だった)
My noon, my midnight, my talk, my song; (俺の昼、俺の夜、俺の話、俺の歌だった)
I thought that love would last forever: I was wrong.
(それが永遠に続くと、勘違いしていた)
The stars are not wanted now; put out every one, (もう星は要らない、片付けてくれ)
Pack up the moon and dismantle the sun, (月も太陽も お払い箱だ)
Pour away the ocean and sweep up the woods; (海も森も姿を消してくれ)
For nothing now can ever come to any good. (もう何もいいことは無い)
登場する友人たちの中で、唯一まともな関係性を築いていたゲイのカップルである彼らには“結婚”が許されていない。“愛し合っているのに結婚できない”彼らと、“結婚できるのに躊躇している”チャールズたちが対照的に描かれている。
(※イギリスでは2005年にシヴィル・パートナーシップ法が施行され、同性同士でも結婚に準じた関係性が認められるようになり、2014年にはイングランドとウェールズで同性婚が可能になったとのこと)
…で、すったもんだの末に、またしてもチャールズが再会したキャリーは離婚しており、他の人との愛のない結婚に踏み切ろうとしていたチャールズを聴覚障害のある弟が手話で説得する…という顚末は素敵で、扱っている要素の数々が全体として功を奏していないだけであって、決してまるで中身のないラブコメというわけでもないのである。
とはいえ、リチャード・カーティス脚本による本作がヒットしたおかげで、後の『ノッティングヒルの恋人』などのラブコメ・ブレイクに繋がっていくという意味で、この作品はヒューにとって必要不可欠な通過点だったと思う。
ラストでは、結婚について悩んだ主人公なりの答えで締め括られる。異性に対してだらしなく、いい加減に思えた描写も、男女関係についてのイギリスらしい皮肉な見方が提示されているだけであって、「まあこんなものなんだろうけど、それでも色々考えた結果はこれさ」みたいなことなのかもしれない。友人たちもそれぞれ幸せそうで(適当ではあるが)、良かった良かった←エンドロールまで見ないとわからない。
この頃のヒュー・グラントにはまだ美しさがあって、彼が好きな人には良い目の保養になるだろう。実は、私のボーイフレンドにちょっとした表情や所作が似てるなあと感心しながら見ていた。ある種の外見が優男風(性格は強くても)の美形は、雰囲気が似ているのだということを改めて感じ入った次第である。
ただ、それにしても、主人公がうじうじした自信のない男&身持ちの悪い女で、魅力なさすぎというのは、あまりにもイケてないと思うのだが、いかがなものであろうか?
Four Weddings and a Funeral
監督:マイク・ニューウェル
出演:ヒュー・グラント、アンディ・マクドウェル…
1994年/イギリス/118分
何も考えずに眺めるタイプの軽やかな作品だけど、そうやって流すと、たぶん余計この作品に散りばめられた結婚にまつわるメッセージは届き難いのかもしれない。でも、それは仕方ないよね。
Bon Voyage★