文豪の世界をのぞき見できちゃう1冊 | 無料塾「中野よもぎ塾」のブログ

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こんばんは、塾代表の大西ですニコニコ

今日は、文学好きな生徒へオススメの1冊。
あまり興味がなくても、これを読んでみると、「ちょっとあの有名な作家の本、読んでみようかな」って気持ちになるかも。

小説 太宰治 (岩波現代文庫)/岩波書店

¥972
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上のは岩波書店から出ている文庫版ですが、私が持っているのは初版が1964年に出された審美社のもので、5刷(1970年)バージョンです。
私が生まれる10年前に売られていたものだから、結構古い!!

檀一雄というのは昭和に活躍した作家さんで、女優の檀ふみさんのお父さんです。
有名な作品は『火宅の人』かな。

太宰治は中学生以上なら皆さん知ってますよね。
檀一雄と太宰治は若かりし頃に深い交友があり、何度も酒を酌み交わした仲です。
檀一雄のほうが、太宰の3歳年上。
太宰は38歳で自殺して死んでしまいますが、この小説は太宰の死後、檀が太宰と過ごした日々を振り返って書いたものです。
太宰ってどんな人だったのか?どんなことをしゃべり、どんなことを考えていたのか?何を食べ、どのように暮らしていたのか?
そんなことが、とても生き生きと描かれています。

私はこの本に中学生の頃に出会いました。家の物置部屋にこれがあったんです。
これを読んだ私は、もうすっかり、「文豪たちの世界」に魅了されたのを覚えています。

太宰と檀、またその仲間の作家さんたちは、親から仕送りをもらったり、奥さんや妹の着物を質屋に入れたりしてお金を作って、そのお金で結構激しく女遊びをしていますが、それさえもなんだか「かっこよく」思えた中学生時代……。
今思えばロクな男たちじゃないわけですが、このときの憧れの感情から、私の男を見る目は狂ったのかもしれません(笑)。

さて、何がキラキラして見えたかって、教科書や国語便覧に載っているような有名な作家さんたちが、ここには次から次へと登場してくるんですよ。で、どんな会話してたかっていうのが書かれてる。
それだけで何だか「すごい!」ってドキドキするのが文学少女です。

たとえば、私がこの本を読む前にすでに詩集を読んでいて好きだった、中原中也。
中也と太宰の絡み、面白いんです。
太宰は中也を尊敬していたらしいんですね。ところが、酒場で出会ったこの2人(正確には、檀の家に中也と、草野心平という詩人が2人で訪れて、そこに居合わせていた太宰と4人で飲みに行ったんですが)、大げんかをしたようなんです。
といっても、中也が一方的に太宰にカラんで悪態をついたような感じで……。

中也!! なんという横暴な性格!
私はそれまで、詩集を読んだだけのイメージで、中也はきれいな顔してなよ~っとして知的な物静かな男だと思っていたので、この場面を読んでたまげました(で、そのギャップでますます好きになりました)。

さらに次に飲んだとき、このときには草野心平抜きの3人で飲んでいたんですが、また中也が太宰にケンカを売るんですね。で、太宰は逃げ帰ります。
それを中也が追っかけます。その中也を檀が追っかけます。
そして、帰って寝ている太宰の部屋に2人が入っていって、太宰をたたき起こそうとする中也……を止めて、投げ飛ばす檀。中也は雪の中に投げ出されてしまいます。
弱ッ……!!


こんな話を読んでいると、教科書にはすました顔した小さな顔写真だけが載っている作家たちが、私の頭の中でみるみる、笑ったり泣いたり怒ったり、バカをやったりする同じ人間としての土俵に引きずり下ろされてくるんです。
どんどん、彼らのことを好きになります。
で、国語の授業でこうした作家の作品が出てくると、思わずニンマリしてしまうんですよね。
先生がその作品がいかに優れているかなんて説明している中、「でもこの人、ろくでなしなんだよね」とか思ったりして。


ちなみに太宰はケンカを売られやすい体質なのか、三島由紀夫からもイキナリ「あなたの文学が嫌いだ」と初対面で言われています。
このことは、三島由紀夫の随筆『私の遍歴時代』に書かれています。ひどいよ三島!
でも、三島が太宰を嫌いな理由もそこに書かれていて、それはちょっと納得。
中学生の私なら「ひどいよ」とだけしか思わなかったと思うけれど、オトナになった今は三島の気持ちがわかる気がします。

あともう1つ。昨日この『小説 太宰治』を読み返していて新たに気付いたこと。
太宰治は、「味の素」が大好き。
鮭缶に味の素をふりかけたのをお酒のつまみにしていたり。
味の素は文豪も愛した味だったのである!!


ということで。こういう作家たちの様子が書かれた本を読んでおくと、きっと国語の授業、ぐっと楽しくなると思います!

+++
オマケ。
私が持っている審美社の『小説 太宰治』に挟まっていた、読者アンケートハガキ。



郵便番号が3ケタだったというのは、今の中学生は知らないかな?
私が子どものころは3ケタでした。
笑えたのは、切手の代金が7円ってとこ。安い!
切手は40年そこそこで7~8倍くらいの値段になっちゃったんですね。