京都大学人類学研究会(通称、近衛ロンド)の想い出。

私が、私立高槻中学校の生徒だったとき。
朝日新聞に、京都大学探検部がトンガ諸島で調査(探検)した記事が、興味深い写真とともに紹介された。
海外渡航が、まだ、珍しかったころ、NHK取材班の海外紹介番組や、新聞で、海外の生活文化に触れる機会が楽しみだった。
この京都大学探検部の記事に興味をもった私は、その探検部の一員としてトンガに赴いた堀田満さんが、高槻中学校で非常勤講師をされていたことを知る。
うれしかったのは、授業のなかで、ご本人から、お話を聴く機会を持てたこと。

のちに、京都大学人類学研究会(通称、近衛ロンド)に参加して、当時の探検部の面々と顔を合わせることになるとは、不思議な縁と思う。

高校時代は、日本史に関心が向くが、ベビーブーム世代にとって、大学受験で、希望を叶えることに失敗してしまった。



失意のうちに、選んだ甲南大学だったが、そこで、文化人類学と出会い、大きな転機を迎えた。
私が入学したころ、我妻洋さん(社会心理学)の後任として、米山俊直さん(文化人類学)が着任され、米山さんとの出会いから、中学時代に関心を持った文化人類学、社会人類学に引き戻された。

米山俊直さんの「文化人類学」の授業を受け、米山俊直さんのすすめで、京都大学人類学研究会(通称、近衛ロンド)に参加することになる。
大学2年生のときだった。
京都大学人類学研究会(通称、近衛ロンド)は、大学の研究者、大学院生、一般社会人がつどい、たいへん刺激に富むつどいだった。
まだ、学部の学生の参加は、めずらしかったが、のちには、高校生も参加してきた。
研究者も、動物生態学、薬学、社会学、医学、物理学、心理学、言語学など、多方面な分野の研究者がつどっていた。
人類学に関心があり、数回、参加してみて、気に入れば、会費をおさめ、正規のメンバーとなった。
私が初めて参加したのは、米山俊直さんの「社会人類学」(全5回)だった。
大学の授業だけでなく、米山さんの話をどん欲に聴きたかったからである。
米山俊直さんは、アメリカのイリノイ大学に留学され、帰国されたばかりのころだった。
アメリカの様子をしりたい人達が、多く集まられていた。
京都大学といえば、当時、東アフリカに拠点を置いた、継続調査がなされており、帰国されると、スライド上映を含め、ほやほやホットな情報に触れることができた。
米山俊直さんの5回のあと、梅棹忠夫たちヨーロッパ探検隊の調査報告が続いたと記憶している。
「ヨーロッパを探検する」という切り口を、新鮮に思った。

研究者では、梅棹忠夫さん、藤岡喜愛さん、岩田慶治さん、大島譲二さん、中尾佐助さん、和崎洋一さん、加藤秀俊さん、米山俊直さん、石毛直道さん、松原正毅さん、江口一久さん、畑信行さん、福井正義さん、赤坂賢さん、嘉田由紀子さんが常連メンバー。
ときどき、中根千枝さん、原ひろ子さん、本多勝一さんなど、遠方からの来客もあった。
SF作家の小松左京さんも、よく、参加されていた。
スタンフォード大学の別府春海さんから、興味深い話を聴いた。

この多彩なメンバーが、それぞれの持論を展開するので、刺激的だった。