ジャン・トゥトゥクーは自由な空間であった。厨房と事務室以外は概ねどのように使っても良いことになっていた。トイレのドアを使って芝居をした団体もあった。開演直前はお客さまに配慮しなければならないが、トイレの個室はちょっとしたハケになり、待機場所にも使われた。







 そのうち「洗面台のあるところにもドアを付けたい」という劇団が現れた。美術を務めるのはジャン・トゥトゥクー利用常連の若き舞台監督さんであったと記憶する。仕込みの当日にその「洗面台用のドア」がやってきた。壁にはめてみると不思議なことに、昔からそうだったのではないかと思えるほどに馴染んでいる。ジャン・トゥトゥクーのドアを徹底観察し、ソックリにたたいたのであるから当然かもしれないが、その再現度にはずいぶんとビックリさせられた。