座席は1番後ろ。トイレに近いし、深夜の秘密のビュッフェにも近い。1番後ろの座席、その真ん中に筆者は座った。左側には村上さん。右側には増田さん。そして通路を挟んで東浦さんが座っておられる。



(ギリギリで搭乗口を通った。)




 9時半から飛行機が動きはじめたが、離陸前に「除氷作業」なるものが入った。結局、離陸は10時であった。これから10数時間も空の旅が続くのだ。30分やそこら離陸が遅れたとしても、どうにか巻き返すことができよう。羽田での乗り継ぎだって時間にたっぷり余裕がある。羽田についたら蕎麦をすする時間ぐらい確保できるだろう。




(朝日の射し込む駐機場。)





 離陸して間もなく食事となった。往路と一緒だ。やっぱりどうしてもドタバタドタバタとされるようだ。あっちでガチャン、こっちでガチャン。飛行機は特に揺れていないのだが、大慌てでやってしまわなければならない理由がきっとあるのだろう。これからの気流の問題なのか、大慌てで配膳されて大慌てで食事タイムとなった。



(熱心な除氷作業が続く。)




 14時を回ったあたりだったろうか。約4時間程フライトした頃だ。ようやく復路の3分の1を消化しつつあった頃、突然アナウンスが入った。フランス語なので我々はわからないのだが、東浦さんが「えっ!?」と驚いておられた。聞くとどうやら引き返すとのこと。間もなく、日本語でのアナウンスが入った。


「えー、コ、コックピットの、んえー、さ、酸素に、んえー、も、問題が、あー、出ており、幾度も復航を試みましたが、えー、このままですと、おー、ヒマラヤ山脈上空を飛行出来ないため、当機はパリ・シャルル・ド・ゴール空港へ引き返すことにいたしました。」


なぜ、シドロモドロなのだ。






 というわけで、そこから引き返すこととなった。もちろん客室は消灯。座席前のモニターで、飛行機の現在地を知ることも封印された。iPhoneだけが接続して使える一部のWi-Fiも予告なしに終了となり、とにかくいろんなものをセーブして一刻も早く空港に戻る、そういう姿勢が見えた。




 客室内は概ね穏やかであったが、筆者はもう体がプルプルしてきておかしな状態になってしまった。18時半、まもなくシャルル・ド・ゴール空港に着陸する。客室内の照明は不思議な演出になっている。窓の外にはパリの夜景が広がる。


「皆さま、幸いなことにエッフェル塔が今夜も輝いております」


というフランス語のアナウンスで客席は笑いに包まれた。



(客室内。)




(夜景。)



 そこからは再び入国審査である。筆者はまた怪しまれなければならないのだろうか。飛行機が引き返してきて再びフランスに入国する者に「旅の目的は?」などと聞くとは考えられない。「旅の目的は?」という質問は要するに「何しに来た?」という質問であるからだ。それはおまりにも面倒くさいので、Google翻訳を駆使してこんな文章をこしらえておいた。何か言われたら審査官に印籠のように見せつけてやろうと思った。



Je ne peux rien faire.

(何もできません)


Je veux retourner au Japon.

(日本に帰りたいです)





 恩情のある入国審査であった。特に何も言われずに通してもらえた。その後我々はエールフランスに預けた荷物は受け取らずに広い空港をさまよい歩いた。朝旅立った場所に、夜戻ってきた。ただそれだけだった。





 ようやくエールフランスのチェックインカウンター12というものを見つけ、長い列に並び、ホテルをとってもらい、明日のチケットをもらい、羽田からのチケットももらい、ミネラルウォーターと洗面道具をもらい、遠い遠いシャトル乗り場まで行って、ようやくホテルにたどり着いた。チェックインの列に並び、夕食付きであったので、皆でとった。筆者はフィッシュ&チップスを食べた。重たいものを食べたかった。意外にも美味しかった。






 エクスプレスホテルの236号室にスッポリおさまった。なぜ筆者はまだパリにいるのだろうか。


(ホテルにて。)



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坂本企画
『抱えきれない わたしを抱いて』

第30回OMS戯曲賞佳作作家、坂本涼平の受賞後初の長編作品。
「ほんの少し、ボタンを掛け違えた人の悲劇に寄り添う」がモットーの坂本企画が、難病患者の生きる権利と死ぬ権利に焦点を当て、「なぜ人を殺してはいけないのか」という問いに答えを出す意欲作。

【あらすじ】

“あの子”は突然やってきた。私たちの教室に。“あの子”が繋がれた、最先端の生命維持装置。それを扱うのは、先生一人と十三歳の私たち。生命維持装置の警報が鳴れば、すっ飛んでくる金切り声のおかあさん。荒れるクラス。攻撃し合うクラスメイト。私の大好きな先生は、日に日に疲れてうつむいていく。
誰かが背負わなきゃいけないなら。私がぜんぶ背負ってあげる。──幼い決意が芽生える時、導かれる解答は。


【企画意図】
 どうしようもない困り事が、世の中にはあると思う。はっきりと線引きできないものが、世界にはあふれている。それを割り切る者は、きっと一線を踏み越えることになるのだろう。自分の望みのために一線を越える者は、それが故に望みを奪われるはずだ。それが悲劇の鉄則なのだから。
 そんなシンプルで強固な芝居がしたい。自ら生きられない者は、生きる権利はないのか。問うことすら許されがたい問いを携えて、その答えを「生」の側でなく、「死」の側に用意して、観るものを揺さぶりたい、そして、そのやり方は美しくありたい。そんな芝居が、いま観たいのだ。


※第一幕台本公開中:http://blog.livedoor.jp/tottengeri/archives/1802248.html 
※本公演トリガーアラート:http://blog.livedoor.jp/tottengeri/archives/1802253.html

 
【上演日程】
〈大阪公演〉
2024年
3/22(金)19:30
3/23(土)14:00/18:00
3/24(日)12:30/16:00
 
〈東京公演〉
2024年
3/29(金)19:30
3/30(土)14:00/18:00
3/31(日)12:30/16:00
 
受付・開場は開演の30分前
上演時間約90分を予定
 
【チケット】
前売¥3,500 当日¥3,800 学生¥2,000(要学生証) ※全席自由
予約開始:2024年2月1日(木)12時

公式HP:https://www.sakamotokikaku.com


大阪公演チケットフォーム
https://ticket.corich.jp/apply/292970/002/




東京公演チケットフォーム:
https://ticket.corich.jp/apply/293003/002/


【上演劇場】
大阪・日本橋 インディペンデントシアター1st 
大阪府大阪市浪速区日本橋3丁目3-19 インディペンデントシアター1st
●OsakaMetro堺筋線 恵美須町駅 1A出口 右手(北)8分
http://itheatre.jp/access.html

東京・三鷹 SCOOL 
東京都三鷹市下連雀 3-33-6三京ユニオンビル 5F
👣三鷹駅南口・中央通り直進3分、右手にある茶色いビル5階
https://scool.jp


【出演】
鳩川七海(幻灯劇場)
中野聰(愚禿堂/宇宙ビール)
荘司歩美(坂本企画)

 
【スタッフ】
脚本・演出 坂本涼平
舞台監督 西野真梨子 
美術 本田夏実(BS-Ⅱ) 
照明 菅野万里恵(baghdad café)
音響 八木進(baghdad café)
音楽 イナミセイジ 
衣装 坂本歩美
小道具 きのこうじょう
宣伝美術 北岡悠 
舞台写真 北川啓太 
映像撮影 飯阪宗麻(NOLCA SOLCA Film) 
制作協力 (同)尾崎商店 
 
 
【問い合わせ】
坂本企画
sakamotokikaku@gmail.com



【期間限定公開中!『The Bone』2パターン】

https://youtu.be/gJJOeL2X7HA?si=N9d98Q8O9V__2qoo


https://youtu.be/pKoxWyAIy0E?si=opvt0dDILZ502Lg0

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