ひとり暮らしの部屋に久しぶりに届いたのは、1枚のCD。
カズが寂しい思いをしてるファンの為に出来ることを考えて、俺たちに相談して作ったアルバム。
音楽が好きで自分でも曲を作るくらい好きなのに、あえてカバーで作ったアルバム。
すぐに聴くのが惜しいような気がするけど、やっぱり我慢できずにすぐにプレイヤーにかけた。
部屋に溢れだすカズの声。
あの優しくて、感情の色や匂いがするような俺の大好きな声。
その声を聴きながらアルバムのジャケットと歌詞カードを見ていく。
しっかりアイドルしてるカズがそこに居た。
恐ろしく頭が切れて、いつだってアイデアに溢れてるくせに、びっくりするくらい緩くてマイペースなアイツ。
はじめましてであの緩さを見た人は大抵すげぇ驚く。
でもそれがきっかけで、誰よりも人との距離を縮めるのが早い。そもそも本人は距離なんて感じてないだろうけど。
そんなカズのキメてる顔は緩い顔と同じくらいカッコよくて可愛い。
もう39なのに、いつまでも可愛いってどうなってんだろうなと、アイツ見てるといつも思う。
そんな事をつらつらと考えながら何度もリピートして、その日はカズの声に溺れて過ごした。
3日後、配信が始まったタイミングですぐにダウンロードしたアルバム。
やっぱり持ち歩きたいし、散歩とかしながら聴きたいなって思って。
で、泣いた。
青い空と白い雲と草原にある黄色い屋根の小さな家の絵を描こうと思って、イヤホンつけてカズのアルバムをかけた。
1つめの音からもうダメだった。
なんでなんか分かんねぇ。
カズの声が優しすぎて、大きな愛に包まれてるみたいで鼻がツンとして、瞼が熱い。
じわりと視界が滲んだと思ったらぽろりと涙がこぼれてた。
カズってこうなんだよ。
なんにも直接は言わないけど、それでもカズの声が全てが訴えかけるように、その気持ちを伝えてくる。
根っから表現者なんだろう。
もう何ヶ月も会ってないけど、信じらんないような忙しいスケジュールの中、こうやって誰かと繋がるための努力を惜しまない。
そんなカズが好きだと、改めて思う。
どの曲も誰かを求めて、繋がろうとしてる。
誰かを攻撃したり排除したりしない。
そんなところも好きだ。
会話から始まる歌を聴いて胸が苦しくなった。
分かりかあえてるし、気持ちはちゃんと繋がってる。
でも本当は本当の本当は......
変わらない保証のないワタシとアナタ
胸に刺さって苦しくて、慣れっこの寂しさなんてダメじゃんと思いながら、それ俺のせいだよな....なんて。
頻繁に交わすメールアプリの中のカズはいつも楽しそうだけど。
本当は寂しいこともあんのかな、なんて。
いや、本当はそんな事全然ないのかもしんないし、1人の時間をちゃんと楽しんでるのかもしんないけど。
たまには急に会いに行っても良いのかな。
いつも一緒に居た時みたいに、来ちゃったって言えばあの部屋に入れてくれるんだろうな。
あー、久しぶりにだらんと俺にもたれてくるあの重みが恋しい。
まだあと少しひとり暮らししたいけど、またふたり暮らしに戻るまでもう少し待ってて欲しいけど、ちょっと会いに行っちゃおうかな。
そんな事考えてたら画用紙の上には柔らかく笑いかけるカズがいた。
やっぱ会いに行こう。