ちぎったレタスと小さなサイズのプチトマト、ルッコラ、薄く細く切ったニンジンと水にさらしておいた玉ねぎをサラダボウルの中で混ぜて、翔さんが大好きって言ったんだよってまーくんが力説するドレッシングで和える。
カリカリに焼いたベーコンチップをのせて、サラダの出来上がり。
本当、翔さんあなた愛されちゃってんのね。
なんて、思うけど口には出さない。
だってそんなこと言おうもんなら、照れちゃったこの人が俺のことバンバン叩くに違いないし。
そういう時のこの人は力加減がバカだし。
まぁ、そんなこの人を好きだけどね。
素直で真っ直ぐに伝える愛は、俺から見るとものすごく眩しくて、こんなふうになれたらと思わないこともないけど。
それだって素直じゃない俺は、口に出すことはできない。
色々考えながら油を温めていると、来訪者を告げるチャイムの音が鳴った。
「あ、潤ちゃんかな」
「早く開けてあげなさいよ」
「うん。ちょっと行ってくるね」
そう言ってインターホンの画面を見に行くまーくん。
やっぱり潤くんだったみたいで、今開けたよーって声が聞こえてくる。
きっと玄関の鍵も開けて、いつもみたいに足音が聞こえてくるのを待ってるんだろう。
部屋のチャイムを押すより先に開くドアに、みんな最初はびっくりするけど、2度目からは嬉しくなるんだよ。
だって開いたドアを押さえるその人が、ものすごく楽しそうな顔してるんだから。
「カズ、お疲れー」
「潤くんもお疲れさま」
キッチンで手を洗いながら、潤くんが俺の手元を覗いて美味そうって呟く。
まーくんは対面キッチンのカウンターにお酒を並べて「わ!すげ!マジかー!」って1人で興奮してる。
「そんなにいい酒買ってきたの?」
「ん?いつもの酒屋さんにお願いしといたら、ちょっと特別なの仕入れてくれちゃっててさ。折角だからね。買ってきた」
「へー」
食通でお酒も大好きな潤くんがちょっと特別って言うなんて、どんなお酒なんだろって気になって、俺も油の火を止めてカウンターに移動した。
潤くんも後ろからついてきて、相葉さんが並べたお酒たちを見る。
「すげ。いっぱいだね」
「だろ?」
「潤ちゃん、こんなにいっぱいいいの?」
「翔さんの誕生日だからね。良いでしょ」
「ありがとう潤ちゃん!」
潤くんに抱きつかんばかりに感激した様子のまーくんは「翔ちゃんどれが好きかなぁ。あ!乾杯はどれにする?」って、ワクワクしてる。
ふちの方に並べられたシャンパンはピンクのドン・ペリニヨン。
潤くんってやっぱモテるんだろうなぁとか、思っちゃうよね。
わいわい話しながらドンペリは冷蔵庫にしまわれて、いくつもあるビールも同じように冷蔵庫へと収納された。
カウンターには日本酒と焼酎と赤ワイン。
「これ、全部飲むの?」
「や、なんか飲みたいもの揃ってる方がいいかなーって思ったから」
「あー、そういうことね」
「うん。残ったら翔さんと相葉くんで飲むでしょ?」
「えー、いいの?」
「顔、緩んでますよ?」
「え!マジ?」
潤くんがブッと笑って、それを見て俺もおかしくなって、もーって膨れるまーくんも結局笑っちゃって。
散々笑ってふーってひと息ついたら、ピンポーンってチャイムの音が部屋に響いた。