二杯目のジントニックを頼んだ潤は、少し濡れた唇を人差し指で拭いながら俺を見て、やっぱ色っぽいよなって囁くみたいに言った。
俺は、そんな潤の方が100倍色っぽいよって思いながら、ふふって笑った。
店のあちこちから潤に視線が飛んでる。
ただでさえ目立つ潤が、色っぽい目つきで仕草で俺を誘ってるんだ。
もしも俺が断ったら声をかけようと思ってるって顔のヤツらが目を光らせる。
「なぁ、ニノ...俺はどう?」
「どうって、ナニ?」
「焦らすんだ?」
「ふふ。簡単じゃ面白くないでしょ」
「お前が簡単なわけないだろ。あの頃からお前はちょっと違ったよ」
「そう?」
「そう」
スッと指先で俺の少し長めの髪を耳にかけて、そのまま俺の耳元に口を寄せる。
「なぁ、抱かせてよ」
このまま押し倒されてもいいって思うほどの、低くて色気のある声で囁く。
頷くことは簡単だけど、それって俺達はどうなるのさ?
「もう酔ったの?」
「酔ってないよ」
「じゃあどういうつもりよ」
「お前だから....抱きたい」
色気が滲み出るような瞳が俺を見つめてる。
だけど、その光は揺れて揺らめいて消えてしまいそうにも見える。
潤...どうした?
いつもの俺様なくらいの自信満々なお前はどこ行っちゃったんだよ。
きっと、この店の誰も気づかないその微かな揺らめきが、俺の心を動かす。
「行こう」
俺の耳に触れたままの指先に、俺の指を絡めて答えた。
フッと笑った潤の瞳はキラッと輝いて、またあの頃みたいな明るい色が射し込む。
雨上がりの匂いの道を少し歩いて、路地裏のラブホテルに入った。