「んっ...ああっ....ふ..ぁん」
極彩色の光がカーテンの隙間から射し込んで壁に虹をつくる。
そこに射すのは俺とこの人の影。
ネオンに包まれたたくさんの店が並ぶこの街の、同じようなネオンに包まれたラブホテル。
その小さな部屋で、俺はこの人に抱かれる。
大野智、この人は俺の恋人。
"松本dance academy"は、この数年で生徒数が爆発的に増えて、スクールはすでに3つの支部を抱えている人気のダンススクールだ。
俺と大野さんはそこの講師で、生徒からの人気も実力も一二を争っている。
松本dance academy主催の松本潤。
潤はステージを作る才能に長けていて、その才能に惚れたたくさんのアーティストのステージを演出してる。
一昨年結婚した奥さんは潤のダンスの師匠の娘さんで、2人は幼なじみとしてずっと恋を育んできた。
入り婿の潤は奥さんをとても愛しているけど、海外留学中にオトコもいけることに気づいて以来、定期的にそっちの恋人を作ってるらしい。
俺とはそろそろ1年くらいになるかな。
ちょうど潤と奥さんの間に娘のエマちゃんが産まれた頃からだった。
その頃、長く付き合ってた恋人と別れたばかりだった俺は、いつものバーで良いオトコを探しながら飲んでた。
根っからネコの俺を色んな男が品定めするみたいに見てるけど、どいつも俺の好みじゃなくて、今夜は無理かなーなんて思ってた時、肩に柔らかく乗った手。
ゆっくりと肩に乗るその手を見て、もしかしてって思った。
そろりと目線を手から腕、腕から肩、首へと上げていくうちに確信に変わる。
「潤せんせ...」
「やっぱりニノだった」
ニヤリと笑ったその顔は、ガキの頃から変わらなくて俺たちの付き合いの長さを思い出させる。
潤とは高校で知り合った。
俺たちの学校は男子校だったけど、近隣の女子高生の王子様だった潤は、あの頃からキラキラしてて。
彼女が居るからって何度もラブレターを返してるのを見かけたけど、結局、潤が結婚するまで彼女に会ったことはなかった。
高1の春、同じクラスになった潤の誘いで興味本位で始めたダンスに夢中になった俺は、気づけば今じゃダンス講師。
同級生の潤は、松本dance academyのオーナーになったのに、俺はそこのしがない講師で。
僻んでるわけでもないけど、いつの間にか立場って変わっていくもんなんだなぁなんて、思ったりもする。
大学生の頃気づいた俺の性癖は、すぐに潤にもバレたけど「で?それが何?」って真顔で言った潤。
こいつとは一生友達でいたいと思った。
それからしばらくして潤はアメリカに旅立って、帰ってきたのは3年後。
華奢な少年だった潤は、オトコの顔した青年になってた。