目覚めると良く知った筋肉質な腕に包まれてた。
細いけど男らしい綺麗な指が、俺の手をぎゅっと握ってる。
昨夜、お風呂上がりで潜り込んだベッドの中。
さとしに優しく抱き寄せられて、肩に頭を預けて眠った俺。
柔らかい眠りに落ちる前、さらさらと俺の腕を撫でる綺麗な指が見えた。
大好きなその指が俺の腕を、愛おしいと言っていた。
目覚めて最初にその指を感じた。
それが嬉しくて、そう思ったのと同時になぜか涙がポロリと零れた。
俺が手に入れたのは、この先の未来ごとのこの人だ。
愛し愛される未来。
この人のそばで笑ったり泣いたりしながら生きていける未来。
どうしよう。
そんなもの手に入れちゃって、俺どうしよう。
嬉しすぎて幸せすぎて、胸が苦しい。
温かい腕の中にいるこの現実が、ずっと続くだなんて。
涙が止まらなくて、鼻をズルっとすする。
抱きしめる腕の持ち主に、泣いてることを知られたくないのに、止まらない涙は俺のコントロールを離れてポロポロ落ちていく。
頬が濡れて、抱かれる腕も濡れていく。
ねぇ、幸せだよ。
俺、たぶん今までで一番幸せだ。
止まらない涙と鼻水が、俺の気持ちを溢れさせる。
小さな声で呟いてた。
「さとし、大好きだよ」
それだけで苦しくて、ぎゅっとつまる胸を掴むように裸の胸の前で手を握りしめた。
「かず...」
寝起きの少し枯れた声が聞こえたのと同時に、握りしめた手がさとしの手に包まれる。
「なんで泣いてんだよ」
起き上がって俺を見下ろして、心配そうに眉を下げて言う。
その眉に手を伸ばして、そっと撫でながら返事をした。
「幸せすぎて...泣けちゃうんです」
「そっか、なら泣いとけ。そのうち泣いてられないくらい幸せに慣れるよ」
そう言ったさとしは、やっぱり俺より大人で。
優しくて頼れるオトコの顔をしてた。
「そんなに幸せにしてくれんの?」
「当たり前だろ。お前のこと愛してんだからな」
「うん。知ってる」
んふっていつもの優しい声で笑って、優しいキスをくれるあんたは、俺の知らない顔をしてる。
そんなに甘い人だった?
そんなに幸せそうな顔、俺初めて見たよ。
俺があんたを幸せに出来るんだね。
俺たち幸せになれるんだ。
そう思ったらまたポロポロ泣いていた。