翌朝いつもより早く目が覚めた俺は、窓の外の空が明るくなってくのを眠るかずの横で見てた。
昨日の夜はあんまり眠れなかった。
それでもこうやって朝は来て、時間は過ぎてく。
かずが今苦しんでるのも、俺がどうしたらいいんだって思ってるのも、少しずつ過去になっていつか空が明けるみたいに変わっていけたらいいなと思った。
少しして目が覚めたかずにおはようって言うと、小さくおはようって返事が返ってくる。
キッチンで簡単な朝ごはんを2人で用意して、今日も自分で起きてきた潤と3人で朝ごはんを食べる。
それから片付けは潤が少しは家事に慣れたいとか言って手伝ってくれた。
今日はかずも元気そうで、電車でも大丈夫そうな感じだから電車で行くことにして、潤と一緒に玄関を出た。
かずは相変わらずゆっくり歩いて、時々返事をする程度だけど、ちゃんと俺の隣を歩いてる。
電車に乗って空いてる座席に座ると、かずは目を窓の外に向けてクリニックのある大きな駅までずっと窓の外を見てた。
時々、かずの手が俺の太ももをぎゅっとつかんできて、かずの様子を伺うと少し眉根にシワが寄ってた。
クリニックに着いたら、すぐに先生の待つ診察室に通された。
いつもと同じ穏やかな顔した先生がかずに「おはようございますって」声をかけると、かずはコクっと頷いた。
今日は、どうやってこちらまで来ましたか?とか世間話をするみたいに先生が話し出すと、かずも椅子の背もたれにトンっと背中をつけた。
それから先生は体調はどうですか?とかご飯は食べられますか?とか色んなことを質問しては、ゆっくりかずの返事を待つ。
脈をみたりして、一通り診察が終わると大野さんは少し待合室で待っててくださいって言われて、かずは後ろに控えてたカウンセリングの先生とカウンセリングルームに歩いていった。
「少し時間がかかるかもしれません」
そう言った先生の顔は、さっきと同じように穏やかでなんとなく安心した。
ずっと先生のその穏やかさにイライラしてたのに、俺の気持ちが変わったのか?
やっぱりかなり焦ってんのかもしれないと思いながら、待合室で柔らかいソファーに座っていたらちょっと寝ちゃって、戻ってきたかずにつつかれて起こされた。
かずについてきてたカウンセリングの先生が
「少し待っててくださいね。大野さんにお薬のこととか説明してきますね」
ってかずに言うと、かずは小さな声だけどはいって答えた。