かずの手を握ったまま眠ってて、ふっと目が覚めたのは真夜中だった。
ソファーにもたれるみたいに寝てたから身体が痛い。
かずの手を少しだけ離して、ンーって伸びをした。
首を回したらコキコキって音がして、かずを起こしちゃうかもってドキッとしたけど、ソファーの上のかずはすやすや眠ってた。
月明かりに照らされて綺麗なかず。
点いてたはずの電気は消えてたから、きっと潤が消してくれたんだろう。
廊下の足元ライトの灯りが入口を明るくしてるだけの部屋。
眠るかずは綺麗で、穏やかな顔をしてる。
髪を撫でて
頬を撫でて
高いのに少し丸い鼻先にキスをした。
「かず....」
起こすのはかわいそうな気もするけど、ここで寝てたら風邪をひくかもしれない。
月はまだ高い位置で、朝までは時間がある。
「かず、起きれるか?」
小さな声で何度か声をかけると、ンンッとむずがるようにかずが身じろぎをした。
「かず、部屋行って寝よう」
「ん.....さと?」
「ソファーで寝ちゃったな」
「ん」
「部屋行こう」
コクっと頷いたかずの背を支えて起こすと、ブランケットをどけてかずを立たせる。
きゅっと繋いできた手を握りかえして2人で部屋に向かった。
部屋に置いてた水のペットボトルから少し水を飲ませて、かずを布団に寝かせて俺もその横に寝転んだ。
すりっと擦り寄ってきたかずに腕まくらをして、少し抱き寄せて背中を撫でるとフッとかずの力が抜けて、俺に体重を預けてくれる。
そのままスーッと眠りについたかず。
俺を殴ったことも、ハサミを振り回したことも覚えてないみたいだったけど、半分寝てたし朝にならないと分かんないなって思いながら、かずを抱きしめた。
朝、目覚めた時はどんなかずなんだろう。
また、あの目をしてたら
俺はどうするんだろう。
あの状態になったかずを、俺は止められるんだろうか。
ヒュッと胸の奥に震えが走った。
考えると眠れなくなりそうで、無理やり考えるのをやめた。
今考えたって仕方ない。
眠らなきゃ、身体がもたない。
耳元にかかる温かいかずの寝息を感じながら、俺も眠った。
翌朝目覚めたかずは、腫れ上がった俺の顔を見て驚いて。
昨日の夜、風呂上がりに足を滑らせて階段から落ちたんだって言ったら「さとし痛そう」って、俺の顔を左手で包むように触れて少し泣いた。