動けない俺の横を通って、ドサッと定位置に座るさとし。
2人がけのソファーは、いつも通り俺の座る場所が開けられて、俺を見上げるさとしと視線がぶつかる。
「どした?座んねぇの?」
「あ、うん。座る.....」
あまりにも、あまりにもいつも通りのさとし。
昨日のことは?
もう、諦めてくれたのかな。
いつもならさとしの顔を見るだけで、考えてることも分かるのに。
今日は全然わからない。
さとしのことが分からないなんて、嵐になってからはなかったから。
.....怖い。
この人は、俺が思うよりずっとオトコで、一度決めたことは絶対に曲げない。
びっくりするほど頑固な一面があるんだ。
「かず?どうした?」
「へ?あ、ううん、大丈夫」
ほら、その声、その表情。
どうしていつもと同じなの?
いつもなら少し怒ったりしてるでしょ?
さとしの気持ちが分からないまま収録が始まって、それでもいつも通り順調に進んでいく。
翔さんも潤くんも、相葉さんも変わった様子もなく。
落ち着かない気持ちだったけど、俺もいつも通りきちんと仕事をした。
収録が終わって、共演者の皆さんにご挨拶して、スタッフとも今日の反省点なんかを少し話して楽屋に戻る。
今日はさとしに捕まりたくない。
今日みたいなさとしと俺、話せないよ。
そう思って、いつもより早く着替える。
着替え終わって顔を上げたら、腕を取られてグッと引き寄せられた。
真ん前にさとしの顔。
15センチの距離。
俺たちのいつもの距離。
「かず、話がある」
「.........」
「わかってるよな」
「.........」
怖くて、返事が出来ない。
みんながこっちを見てる。
「かず、結婚しよう」
みんなの目が驚いてパッと開いて、そのまま俺を見るからどうしようもなくて、下を向いた。
「かず、何度でも言うよ。結婚しよう」
なんでよ。
なんでそんな真面目な顔で、ちょっと泣きそうになってんのよ。
その顔はズルいよ。
俺、あんたの泣き顔に弱いんだからね。
知ってんでしょうよ。
絆されてしまいそう。
うんと、言ってしまいそう。
ぎゅっと目をつぶって、小さく息を吸って答えた。
「お断りします。あなたと結婚しません」
さっきより大きな目を見開いた3人と、表情を変えないさとし。
俺はどんな顔してるんだろう。