なんにも言わないかずの肩を抱いて、ただ座ってた。
俺もなにも言わなかった。
ただそばに居るってことだけ伝わればいいと思ったから。
そうしてたら潤が来て、櫻井さんとなんか騒いでる。
どうやら布団に除菌スプレー吹き付けてるみたいだけど、それでなんであんな騒ぐことになるんだ?
分かんねぇなーって思ってたら、布団抱えた櫻井さんが部屋から出てきて。
「ちょっとごめんね」
って言いながら、相葉さんの部屋の入り口を塞ぐように座ってる俺とかずを避けて入っていって。
中から2人が何か話してるような声が聞こえた。
「大野さん、俺下行ってるから」
「あー、うん」
潤が俺たちに声をかけて、トントンと階段を降りていく。
かずは、ほんの少しだけ潤の方に顔を向けたけど、話はしなかった。
かずの肩を抱いたまま座ってたら、キューって腹が鳴って、そういえばもう夕飯の時間なんだって気づく。
櫻井さんもどうやらご飯の話をしてる。
かずは、腹減ってんのかな。
どこを見てるのか分からないかずの目をのぞき込んで聞いた。
「かず、お腹空いてる?」
「..........」
かずはやっぱり返事をしなくて、だけど部屋の中から相葉さんの声が聞こえた。
「ご飯は要らない。食べたくない」
って。
その声が聞こえた瞬間、かずの身体がピクッと震えて、ふるふるっと首を振った。
「かず?どうした?」
もう一度ふるふる首を振るかず。
目線は相葉さんの部屋の中に向かってる。
食べたくないのか?
相葉さんが食べたくないって言ったから?
そんなに?
そんなに相葉さんの存在って大きいのか。
なんか急に自信が無くなって、俺がそばに居たって何の役にも立たないんじゃないかって思って。
たまらない気持ちになった。
そんな俺の横をおにぎり作ってくるって、櫻井さんが通って行った。
「ご飯どうする?」
「まーくんが食べないなら、俺もいらない」
部屋から顔を出した相葉さんの声に、かずが顔を上げて小さな声で返事をする。
俺は泣きそうで、どうしていいのか分かんなくて、ここにいるのが苦しくて。
俺を見てる相葉さんの視線も痛くて。
「俺、なんか作ってくる」
必死で平気な顔をして、立ち上がって階段を降りた。