「え?かずっ!!どうした!」
急に座り込んだかずの横に、慌てて座って顔を覗き込む。
もしかして気分でも悪くなったのか?
無理したからって、気絶したりしてないよな?
俺って、こんなに心配性だったか?ってくらいかずのことが心配でしかたない。
覗き込んだかずはなんにも見てない目をしてたけど、意識があるってだけで嬉しかった。
正直言って俺もいっぱいいっぱいで、ここでかずが倒れたらって思うだけで血の気がひく。
ホッとした。
「かず、床冷たくないか?」
「..........」
「なぁ、少し部屋行こう。それか下行ってココアでも飲もう」
「..........」
かずは返事をしないまま、ゆっくり動いて膝を抱えて座った。
自分を守るように、色んなものを拒否してるように見えるその小さな身体。
かずの気持ちは、いつ俺の方にも向くようになるのか。
踞るような姿を見て少し落ち込んだけど、先は長いんだ。
こんな事でめげてる場合じゃないんだと、自分を励ます。
そっとかずの肩に腕をかけた。
かずは、俺の腕を嫌がらなかった。
「かず」
「..........」
「聞こえてるか?聞こえてるよな」
「..........」
「また一人にしてごめんな。俺がかずを置いて出かけたからこんな事になったんだよな。本当にごめんな」
かずの肩を抱く指に無意識に力が入ってて、かずが痛かったのかちょっと動いた。
「あ、ごめん。痛かったよな。本当にごめん。2度とかずを一人にしないから、俺のこと信じて。俺はかずが好きだから、ずっとお前のそばに居る」
かずの顔はなんの表情も無いみたいだったけど、耳は少しだけ赤くなってた。
かずの声は聞けなかった。
かずの表情も変わらなかった。
だけど、かずは俺の声をちゃんと聞いてるし、ちゃんと反応してる。
俺が見逃さないようにすればいい。
俺がかずを好きだから、それでいい。
そう思えた。
小さく踞るかずの隣に座ったまま、そんなふうに思った。
しばらくして、階段からコトントン、コトントンって不規則な足音。
階段の方を見てたら櫻井さんと、櫻井さんにもたれ掛かるように歩く相葉さんが上がってきた。
相葉さんの部屋の真ん前に座るかずを見て、相葉さんが声をかけてくれた。
「和、もう寝た方が」
「雅紀」
ほんの少し櫻井さんから離れようとした相葉さんを櫻井さんが自分の方に引き戻してこめかみにキスをした。
不思議だけど、もう腹は立たなかった。
そうするのが当たり前だとさえ思った。
2人はそのままどこで寝るとか話を始めて、相葉さんは部屋に残って、櫻井さんは自分の部屋に向かって。
その間にも相葉さんがかずを気にすると、櫻井さんは相葉さんのこめかみにキスをしてた。
それはなにか神聖なもののようで、かずのことを無視するみたいにイチャつく2人に、あんなに腹を立ててたのが嘘みたいに綺麗だなって思った。