止まったかずの手を見ながら怒鳴り散らす松にいの声に耐える。
「おいコラァ!!てめぇ、返事しろよ。何やってんだっつーの!とにかく今すぐ俺ん家に来い。来なかったらお前とは縁切るからな!分かったのかこのバカ!!」
あまりの怒りっぷりに、返事も出てこない。
俺、何を怒られてんの?
縁切るってなんだよ。訳わかんねぇ。
何でこんなに怒ってんだよ。
チラッとかずを見ると、ぽかーんとした顔でこっちを見てる。
電話の向こうは相変わらずの怒鳴り声。
「おい!聞いてんのか!!」
「聞いてる」
「聞いてるじゃねぇわっ!!」
「いや、ちょっと声デカイよ」
「うるせぇ!!」
「マジで、もう少し小さい声で頼むって」
怒鳴り声がかずに聞こえたらヤバイ気がして、そう言った。
ちょっと間があって少しだけ小さい声だけど、絶対怒ってる声でまた話し出した松にい。
「お前、今すぐ俺ん家に来い」
「は?無理」
「無理ってなんだよ。良いから来い!」
「いや、マジで今は無理だって」
「無理でも何でも来い!来なかったら縁切るぞ!」
「ちょっ!それは」
「嫌なら来い」
「や、でも今、本当に無理で明日.....いや夜じゃダメ?」
「ダメに決まってんだろ!!いいから来いよ!」
プチっと切れた通話。
「マジか.....」
どうしようもない気持ちになって声が漏れた。
行くしかねぇかな。
かずは休ませた方がいいし留守番するように言っておこう。
相葉さんも家にはいるし、自転車で速攻行って帰ってくればいいよな?
松にいがあんなに怒るなんてよっぽどだし、俺、何やったんだ?
「はぁぁぁ」
ため息しか出ないけど、とにかくサッサと松にいの家に行って帰ってこようって思った。
ジーンズにスマホをもう一度しまって、揺れるかずの前にしゃがむ。
動く手を掴んで無意識にチュッとキスしたら、ピクッとして手が止まった。
目はまだ何の表情もないけど、俺の方を少し向いてくれている。
嬉しくてギュッと抱きしめたくなったけど我慢した。
「かず、俺ちょっと出かけてくるな。松にいのとこ行ってすぐ帰ってくるから」
そしたらかずの目に優しい色が見えた。
すぐに消えてしまったけど、それは確かにかずの心の色だと思った。
またひらひら動きはじめた手を撫でて、ずり落ちてたタオルケットをかずに掛けて立ち上がる。
自分の部屋でいつものカバンを取ってきて、相葉さんの部屋のドアをノックしようとしたけどやめておいた。
あんなに顔色悪かったんだ。
寝てるかもしれない。
潤が帰るまでかず1人ならゆっくり出来るはずだし、眠ってるなら起こしたら悪いよな。
俺も1時間くらいで帰れると思うし.....。
静かな部屋の中の様子に、静かにドアの前からリビングに行く。
「かず」
ソファーのかずは振り返らない。
ゆっくり揺れてる。
「行ってくるな」
後ろから頭をぽんぽんって撫でて玄関に向かった。