「こんばんはー。お邪魔しまーす!おーい、バンビー?」
ひとんちの玄関に入るなり、大声でしょーちゃんを呼ぶのはやめて欲しい。
「あれ?バンビー?」
しょっちゅう遊びに来るこの人は、迷いなくリビングに進んで遠慮なく入っていく。
キョロキョロと部屋を見回して、首を捻ってる。
俺は後ろからゆっくり追いついて、そんな先輩を見てた。
「ニノー、なんで翔居ないの?」
「もー、いつも居るわけないでしょ」
「なんでだよ」
「仕事の時間だってバラバラだし、遠くでロケとか多いんですから。そんな日はそれぞれの家で過ごしてるんです」
「マジかよ…翔のこと、からかってやろうと思ってたのに」
「からかうって…」
「まぁいいや。アレ、見せてよ?」
「もう分かりましたよ。ちょっと待っててくださいね」
「ほーい」
いつも通りソファーで寛ぎ始める准一くん。
靴下脱いでだらんとしてる。
たぶん、次はシャワー貸してって言い始めるな。
リビングの扉を開ける直前、声がかかる。
「あ、ニノー」
「はい」
「シャワー貸して」
「プッ」
「あ、何笑ってんだよ」
「いや、想像通り過ぎて笑える」
「いいだろ。タオルいつもんとこの使って良いの?」
「はいはい。良いですよ」
「サンキュー」
ぱっと立ち上がって、嬉しそうにシャワーに向かう准一くん。
どうせ出てきたら、お前も浴びてこいとか言われて、そんでもう少し飲み直そうぜってなるんだよ。
そこまで分かってるから、しょーちゃん怒るだろうな~って思ってしまう。
でも、この人はある意味特別な人だから、しょーちゃんには諦めて貰うしかないんだよね。
例のものと、自分と准一クンの着替えを用意しながら、クスクス笑えて仕方なかった。