カズと居酒屋で2人きり。
落ち着いて飲みたいから、個室を取った。
本当はあの頃みたいに、カズの家に行きたかった。
俺の家に来て欲しかった。
だけど、それは言い出せなかった。
あまりにも遠くなってしまった俺とカズ。
その距離は、一足飛びに超えられるようなものでは無いように思えて、言い出せなかったんだ。
今、目の前にいるカズは、何を考えてるんだろう。
ニコニコと笑ってビールを飲んで、飯もつまみも、俺の薦めるものを珍しく美味しそうによく食べた。
アルコールのせいで頬がピンク色に染まってて、時々俺の方を見て優しく笑う。
俺の言葉に
「ふふふ」
って、笑って。
「たのしーね」
って、言って。
耳を赤く染めた。
なぁ、俺、期待してもいいのか?
お前、俺のこと好きなの?
そう思えるような、いつも通りのような。
「カズ」
「潤くん」
もう限界だ。
カズに気持ちを伝えようと、カズの名前を呼んだら、同じタイミングでカズが俺の名前を呼んだ。
潤んだ茶色の目。
俺をじっと見つめる目。
「カズなに?」
「潤くんからでいいよ」
「いや、カズの話聞きたい」
俺はカズの気持ちを大事にするって決めてたから、カズに話すように促した。
「ありがと」
って、小さく俺に言ってから。
カズが話し出した。
「潤くん、今付き合ってる人いる?」
何言ってんだよって誤魔化そうと思ったけど、カズの目が真剣だったから、ちゃんと答えなきゃなって思った。
なんて答えていいのか迷った。
今、付き合ってる子はいない。
だけど好きな奴はいる。
迷ってるうちに、もう1度カズが口を開いた。