久しぶりのアルバイトの朝、いつも通りさとしと相葉さんのパン屋さんに向かう。
冬の朝の冷たい空気。
さとしの手の温もりがやっぱり嬉しい。
お店についてお仕事を始めて、さとしを見送る。
いつも通りのお客さんとのやり取り。
おばあちゃんのニコニコの優しい顔。
丸山さんの大きな声。
大ちゃんと山ちゃんの楽しそうなじゃれあいも、みんなみんな幸せな色でいっぱい。
お客さんが一段落して、相葉さんも午前中に焼くパンが1通り終わったのを確認する。
コーヒーをいれて、カウンターの奥の台に置いて、ふーっとひと休み。
「相葉さん...」
「なあに、ニノちゃん」
「俺.....」
「あ、ちょっと待って!ちょっとだけ、ね?」
相葉さんはお店の入口に走って行って、ドアにかかる『open』の札を『close』にひっくり返して戻ってきた。
「相葉さん?」
「よし。これでゆっくり聞けるよ」
相葉さんって、やっぱりすごいな。
小さく深呼吸して、相葉さんの顔を見て話し出した。
「了解。じゃあ、ニノちゃん、そうゆうことでよろしくね」
「はい、ありがとうございます」
それから、一ヶ月忙しい毎日を過ごす中で、相葉さんのお店でのアルバイトの時間は、意外な気分転換になって。
いつものおばあちゃんともちょこちょこ話して、編み物の仕方を教わったり。
丸山さんの同僚の人達が、わーっとお店に来て完売状態になったり。
山ちゃんにどうやら可愛い恋人が出来たり。
あの、少しだけ背の低い可愛い男の子の告白で、一気に恋に落ちたらしい山ちゃんは、その可愛いゆーりくんと仲良くパンを買いに来てる。
日々は穏やかに、でも確実に過ぎて。
あっという間に2月になった。