タクシーが止まると同時に目を開けたさとし。
その顔.....。
滅多に見せない本気の顔。
どうしよう。
俺、どうしよう.....。
あんたのその顔を、プライペートで見るのはあの時以来だよね。
前に見た時は、俺に好きだって言ってくれた時。
燃えそうに熱い目で、言ってくれた。
『かずが欲しい。俺のもんになって。好きだ。かずが好きだ』
俺を欲しいと言ってくれるなら、何度だってあんたのもんになるよ。
骨まで、血の一滴まで。
俺の全部をあんたにあげる。
俺の心は、あんたを好きになった日からずっと、あんたのものだったんだ。
俺の自由になんかならないココロ。
あんたを見れば高鳴って、あんたと話せば嬉しくて震えて、あんたが少しでも冷たかったら凍りついたみたいに冷えきって、俺の全部はあんたのもの。
死ぬまでずっと。
死んでもずっと。
来世も、その次も。
この世界が消える日が来ても。
ずっとずっと、俺はあんたのものだよ。
あの日、俺が誓ったこと。
もしもあんたを好きじゃなくなる日が来ても、俺の心はあんたのもの。
その時は、俺は抜け殻になる。
あんたの所にも、他の誰かの所にも行けない。
行かない。
それくらいの覚悟で、あんたの胸に飛び込んだ。
ねえ、あんたはどうなの?
あんたを忘れようとした。心から追い出そうとした俺は、もうあんたのもんじゃなくなった?
その目が、その顔が怖いよ。
ぎゅっと握りしめた手は、1度も離されることなく部屋へと進む。
2人の部屋の玄関に入る。
無言のままでリビングにいく。
冷蔵庫から、お水を1本取り出して寝室に歩き出す。
寝室のドアを開けて、俺を部屋に誘う。
手を繋がれてなくたって、逆らうことなんて出来ない。
逆らいたいと思ったこともない。
さとしに手を引かれるまま、ベッドに座った。
「かずは、誰のもの?」
「さとしの.....でしょ....」
「本当に?」
「ほんとだよ」
「じゃあ脱いで....」
目で促されて、着たままだった上着を、シャツを、ジーンズを脱いでいく。
パンツに手をかけてさとしを見ると、コクっと頷いたから、迷わずそれも脱いだ。
「かず、綺麗だ」
さとしの手が頬に触れて、そのままベッドに押し倒された。
「さとし.....」
恥ずかしさより、不安が勝って。
早く抱きしめて欲しくて、だけど言えなくて。
さとしは、そんな俺をじっと見下ろしてた。