相葉ちゃんと翔くんと潤に周りを囲まれるようにして歩いてる。
俺が逃走するのを防ぐ狙いがあるらしい。
バカヤロ、逃げねえわ。
あんな訳わかんなくなってるかずを、放って置くことはやっぱり出来ない。
例えば、ものすごい罵られるとしても、それでも俺はかずとちゃんと話せるようになりたい。
「お疲れ様です。皆さんご一緒ですか?」
「うん。悪いね急に」
「ごめんね」
「久しぶりに話とかしたくてさ」
「かずんち、行って」
「はい、分かりました」
俺のマネージャーの運転する送迎車にみんなで乗り込む。
マネージャーって本当に人間出来てるよなあ。
かずが1人で帰って、俺たち4人がかずの家に行くなんて、絶対穏やかな状況じゃないのは分かってるはずなのに、気遣う様子も心配そうな様子も見せずにいる。
かずのマネージャーは、いや、嵐のマネージャーはかずに甘い。
かずに限らずメンバーに甘いマネージャー達だけど、かずに関しては、恐ろしいほど息が合ってるし、ちょっとした情報も共有してる。
なぜならかずは俺たち嵐の真ん中にいるから。
かずがいることで、空気が和む。
かずが話すことで、会話が弾む。
かずが動く時は、それが必要な時。
俺たちをコントロールしたりはしない。
だけど、その時に必要なことをスッと目の前に差し出してくれるような。
いつも、全体を見てる。
なのに、ちゃんと俺のことを見てくれてるんだ。そんで、笑いかけて、話しかけて、つっこんで、クルクル変わるその表情も見せてくれて
「ね?」
「はい」
「やめなさいよ!」
「ふふ」
お前の言葉には、いつもいつも俺を好きだって気持ちが溢れてる。
きつい事言われたって、腹が立ったことねえもん。
窓の外は、もうすぐかずの家に着くのが分かる景色になってる。
さっきから、3人がかずに電話したり、メッセージ送ったりしてるけど一向に返事がないらしい。電話も繋がらないから、焦った翔くんが俺にも電話しろってうるさい。
出ないんだろ?
じゃあ、どんだけ電話しても出ねえよ。
そうゆうやつだろ?
とにかく、顔見て話さなきゃどうしようも無いんだ。
電話越しにあいつに演技されたら、さすがに見抜けないかもしれない。
かず、ちゃんと話そう。
怒鳴ってもいい。
泣いてもいい。
ケンカすんの分かってるから離れるなんて言うなよ。
かずのマンションの車寄せで、ぞろぞろと車から降りる。
お互いに交換してる合鍵でエントランスに入って、急ぎ足で部屋を目指す。
勝手に玄関を開けるのはやっぱり躊躇われて、チャイムを押した。
反応がない。
「おーちゃん、もういいから開けよ」
「そうだな」
「智くん、そうしよ」
3人がごちゃごちゃ言ってる。
家の中の空気を少しでも感じられないかと思ったけど、全然わかんねえから、仕方なく鍵をさしこんだ。
家の中は、暗かった。
窓の外の明かりがカーテン越しに部屋を少しだけ明るくしてるけど、電気のついてない居間は、恐ろしく寒い。
ここにかずが居るとはとても思えなかった。
とりあえず電気をつけて、床暖のスイッチを入れてエアコンもつける。
その間も相葉ちゃんが「かずくーん、どこにいるの?」って言いながら家中を見て回ってる。
潤はマネージャーに電話して、かずの居場所を聞いてる。
翔くんはなんか検索してんのか?
スマホいじって真剣な顔してる。
とにかく、一回落ちつこう。
かずは、ここには帰って来てない。
それか、帰ってきたけどすぐに出かけた。
2人の家に帰るとは思えないから、たぶんどっかに出かけたんだ。
どこだ?
こんな時、無性にイラつく。
あいつが頼めば、あいつを匿ってくれる人に心当たりがありすぎる。
誰といる?
まさか、家に行ったりしてねえだろうな。
あー、ムカついてきた。
心配過ぎて吐きそうだわ。
かず、お前どこにいるんだ?