あの人が、俺以外の誰かに甘い顔をするのも、甘い声を出すのも嫌だ。
例えそれがお芝居でも、やっぱり少しだけ寂しい気持ちになる。
あの人の演技が好きだし、俺なんかよりすごい才能の持ち主だと思ってるし、天才ってあの人のことだと思ってる。
心底、尊敬してるし。
どんなあの人も好きだよ。
あの人が頑張ってるのを見るのが本当に嬉しいし、応援してる。
してるんだよ。
演技であの人が恋をしてるってわかってても、やっぱり寂しくて、少し悲しくなる。
嫌だなんて、絶対に言えないけど。
あの人に悟られるようなこともしないけど。
だけど、そんな気持ちは無かったことには出来ないから。
さとしには仕事って嘘ついて、自分だけのフェイクの家に帰って1人で眠る。
悪いとは思うけど、マネジャー達にも嘘をついてもらう。
どうにもならない俺の気持ちを考えてくれて、チーフマネジャーまで、全員で俺の嘘を許してくれてる。
ひとりきりになって、やっと気持ちを解放できる。
こんな気持ちは、絶対にプラスにならない。
俺たち2人にとっても、嵐にとっても。
だから、そんな日は、ひとりになりたい。
頭空っぽにしたい。
俺だけになりたい。
泣いてる日もある。
ぼんやりしてるだけの日もある。
だけど、そこにさとしはいない。
とにかく世の中から自分を切り離したいと、思ってしまう。
ひとりぼっちになって、初めて安心して悲しくなれる。寂しくなれる。
俺はきっと、さとしに相応しくない。
だけど、離れることも出来ない。
困らせるだけの存在にはなりたくないのに、今日は、我慢出来なかった。
あんな風に『好きだよ』なんて聞きたくなかったよ。
本当に好きなんじゃ無いってわかってる。
わかってるけど、でも嫌なんだよ。
挙げ句に
「お前は誰とでもすぐに距離感ゼロだもんな」
なんて言われて。
あなたと一緒にいたくない。
ひとりになりたい。