車の中では、ちょっと懐かしい90年代の歌がカーステレオから流れてて、相葉さんがおっきな声で歌ってる。
運転席の翔ちゃんも楽しそうに一緒に口ずさんでる。
運転席の後ろには俺が、助手席の後ろにはさとしが座ってる。
さっき少し車が揺れたときに指先が触れて、それからずっと小指が重なってて、ちょっと嬉しい。
さとしはずっと窓の外を見てて、時々小さな声で歌ってるのが聞こえる。
もう少し大きい声で歌ってほしいな。
だって、さとしの歌声は本当に素敵なんだもん。
俺が意識飛ばしちゃった時、夜中に目覚めるとさとしが歌ってる時がある。
俺が聞いたことないような外国の歌。
耳で覚えたから、言葉が合ってるかわかんねえって恥ずかしそうにしてるけど、そんなことよりその透きとおるような声に惹かれてしまって、何も言えなくなるんだ。
目を瞑ってさとしの小さな声を聴いてた。
そしたらカーステレオから聞こえてきたさとしのよく歌ってる歌。
俺はどうしても歌って欲しくなっちゃって、重なってる小指を絡めてクイッと引っぱった。
「.....かず?」
不思議そうにオレを見たさとしにだけ聞こえる声でおねだりをする。
「ね?さとし歌ってよ。さとしの歌聴きたい」
困った顔が可愛い。
「ね?歌ってよ」
「うー」
「うーじゃなくて歌って」
コソコソ話してたら相葉さんが振り返って「どうしたの」って聞かれちゃった。
さとしの歌の事話したら、相葉さんが
「聞きたい!聞きたいー!ニノちゃんだけずるいー」
って、騒ぎ出して
「智くん、歌ってやってくれる?こうなったら、雅紀ずっと言い続けるから」
翔さんにまで言われて、仕方ないなあって呟いたさとし。
せっかくだからと、歌を最初に戻して始めからさとしに歌ってもらおうって、相葉さんがウキウキしてる。
すうっと息を吸って、さとしが歌い始めた。