お付き合いを始めたふたりは、お互いに忙しいこともあって、なかなかゆっくりデートしたりする時間がとれずにいた。
だけど、毎日のようにメールなんかで連絡を取りあって週に一度はご飯を食べたりしてるみたいだった。
ある日まーくんから電話がかかってきて
「かずくん、今日会える?」
って、なんか沈んだ声で。
そんなまーくんを放っておくことなんて出来ないから、すぐに会う約束をした。
その日は週末の金曜日で
さとちゃんと帰る約束をしてて、まーくんと会うから先に帰ってって言ったら「俺も行く」ってついてきちゃったんだよね。
さとちゃんがついてきたこと、まーくんは何にも言わなかった。
それが当たり前みたいに、とりあえずご飯食べよって、まーくんのおすすめのラーメン屋さんでラーメンを食べて、唐揚げも餃子も食べた。
食べながら少しだけ飲んだビールで、いつもより早く赤くなったまーくんが、翔さんのことをポロリポロリと話し出した。
泣きそうなまーくんを、さとちゃんのお部屋に連れていって、薄い水割りを飲みながらゆっくり話をした。
「しょーちゃん、すごく優しいんだよ。ドアを開けてくれたり、傘を持ってくれたりして。キスもねすごく優しい。いつも俺のこと気づかってくれる」
「そうなんだ。良かったね、まーくん」
「うん。良かったの。.............だけどさ、俺はもっと俺を欲しがるしょーちゃんが見たい。優しくなんてしてられないくらい、俺のこと求めてほしい」
「まーくん....」
「キスしか....しないんだよ。しょーちゃん」
「え?」
「しょーちゃん、キスしかしないんだ。身体触ったりもしないし、そうゆうことしたいと思ってんの俺だけなのかなって、一回そう思ったらそうとしか思えなくなって、なんか顔見るのも怖くなって、今日も会う約束してたけど顔見れる気がしなくて断ったの。だけど、急に断るなんて、俺のこと嫌いになるかもって思ったらそれも怖くて」
箍が外れたように話し続けるまーくん。
そんなに好きなんだ。
まーくんからは好きの気持ちが溢れてて。
僕とさとちゃんは、その日、まーくんが話し疲れて眠るまで、まーくんの話を聞いていた。
翌朝、まーくんを迎えに来た翔さんは、見たことないような真剣な顔で
「俺は、雅紀の全部が欲しいと思ってる。だけど、急ぐ気はないよ。ゆっくりお互いを知って、ゆっくりふたりで進もうよ」
って、まーくんの手を両手で包み込みながら言った。
コロコロとまーくんの目から涙がこぼれた。