あれは、お前と付き合い出して、何年目の時だったんかな。
七夕の日に、急にオフになって、二人で、一人暮らしを始めたばかりのおいらの部屋にいた。
七夕の短冊に、願い事書いたことあるかって話から、お互いの願い事を話すことになったんだった。
「俺の願い事は、俺の気持ちが変わらないこと。」
「え?おいらのきもちじゃなくて?」
「うん。俺の気持ち。あんたの気持ちが離れるのは、怖くないから。」
おいらの気持ちが離れるのは怖くないって、お前が言ったとき、本当はおいらむっとしたんだ。
だってそうだろ?
お前にとって、おいらの気持ちなんて大して重要じゃないって言われたようなもんじゃねえか。
なんだよそれって、言いかけた時、お前が言ったんだよ。
「俺ね、俺の気持ちが変わるのが怖い。あんたが俺のたった一人の人なのに、俺があんたを好きじゃなくなるなんて、そんなの絶対嫌だ。怖い。」
「なんだよ、それ...... 」
口から出た台詞は一緒でも、気持ちは真逆で、お前、そんなにおいらを好きなのかって、嬉しくなった。
「例えばあんたが、俺を好きじゃなくなっても、俺があんたを好きで居れば、二人でいた時間はどこにもいかないでしょ?」
「かず。」
「俺は、あんたを好きな気持ちも、思い出も、あんたの熱い目も、指も唇も、全部俺の、俺だけのものにしておきたいの。だから、あんたの気持ちが離れることより、俺の気持ちが変わることの方が、怖い」
「かず、おいらの気持ちも変わらない。お前が好きで、お前だけが欲しい。こんなに、誰かを必要だって思ったことないよ」
おいらの言葉を聞いたかずの瞳は、星よりもキラキラと、輝いて、水を湛えたようなその瞳に、おいらは吸い込まれそうだと思ったんだ。