楽屋に置いてあったアンティーク調の鍵。
雅紀から潤、潤からニノ、ニノから智くんに渡って、今、俺の手の中にある。
「翔くん、はい。」
って、あめ玉でも渡すような気軽さで、俺に鍵を渡した。
ニノに髪を撫でてもらってご機嫌な智くん。たぶん、ニノから鍵を取り上げたかっただけなんだ。
ニノが鍵を持ってたら、撫でてもらえないからね。
本当、凄いよ。
ずっとラブラブだもんな。
付き合いだす前、智くんは年上の自分が、先に理性無くすわけにいかない。
あいつには、女と居る未来もあるはずだって、ずいぶん冷たくしたりしてたよね。
だけど、愛情は隠せなくて、溢れて、カズへと流れ込んで。
一人じゃ受け止めきれなくて、混乱したカズが、智くんに泣きついて...
それからふたりで居るんだもんな。
俺が、しょーちゃん、しょーちゃんって懐いてくる雅紀を、可愛いと思ったあの夏。
迷って、悩んで、ぐっちゃぐちゃの俺に、智くんが言ったんだ。
「好きなもんは好きなんだよ。
逃げても追いかけてくるし、どうせ、立ち止まって受け止めちまうんだから、早めに捕まえてやれよ。」
その言葉を、それでも何日か考えて、雅紀を見たら、キラキラしてたんだ。
目を反らすことなんて出来なかった。
雅紀からも、雅紀への気持ちからも。
あれから、どれくらい経ったのかな。
忙しすぎて、日にちも忘れちゃうような毎日を、いつもフラットに戻してくれる。
雅紀が居るだけで、落ち着くんだ。
受け取ってくれよ、あの宝箱は、俺が用意したんだ。
鍵はマネージャーに頼んで置いてもらった。メンバーにサプライズプレゼントしたいって。
リオに行く。その間、雅紀が俺を近くで感じられるように。
これなら、受け取ってくれるだろ?
エンゲージリング
俺の未来は、雅紀の隣にあるから。
「雅紀、ほら、鍵開けたいんだろ?」
鍵は、君のものだから。
おしまい