雨の日曜。基本的に休日は競馬時以外の時間で身体を動かしたいと思っているので、雨が降ると本当に手持無沙汰。何やればいいのかわからない。だから無駄打ちしてしまうんですねえ。もういい歳だし直さなアカンのですけど、それが出来たら苦労しないという。先週採血の結果を聞いてきたけど中性脂肪とかその辺気を付けなさいとお叱りを受けたので来週は身体を動かせるように。
さて日曜に行われた重賞はGⅠ安田記念。早速振り返っていこう。
勝ったのは1番人気のロマンチックウォリアー。スタートは流石香港馬という感じでテンが速く、その気になれば逃げられるくらいの出だし。道中は6番手辺り。ウインカーネリアンが行くと思っていたが、ドーブネが主張してペースメイク。ただペースはやはり上がらなくて、雨の影響も思ったほどではなかったので前半半マイル46.4というのはスローと言って差し支えない範囲。外でステラヴェローチェが手綱を引っ張っていたのが象徴的だった。香港中距離チャンピオンとしては遅すぎるくらいのペースで余裕綽々の追走だったし、その中で好位を取ってしまえばあとは抜け出すだけ。たとえ1/2差でも格の違い、力の差というのをハッキリ見せつけたと思う。パドックで見た感想としては『凄いな』というのが第一声で、今の日本の競馬界ではお目に掛かれないような中距離馬。使う筋肉を極限まで身に着けたという言い方もできるかもしれない。胴はそこそこ長いのでやはり中距離馬なのだろうが、まるでCC体質のような筋肉で、まあ本当に凄いフィジカルを持った馬だなという印象が強かった。こういったガチムチ重戦車みたいなフィジカルはデインヒルのお家芸だったりするが、この馬の場合はデインヒルの血は入っていないし、もっと言えば父母も母父も非ノーザンダンサー。だからこそ力を付けてきた馬体という言い方もできるわけで、それが強みというかね。こういう書き方は良くないかもしれないけど、短距離番組が充実している香港で数を重ねて強くなった馬と、緩いペースをゆったり走るばかりの日本では根本的にマイルに対する下地が違うというのをまざまざと見せたというか。日本の馬が弱いとは言わないけど、明らかに日本の馬とは経験値が違うぞというのを見せてくれて、個人的にはとても嬉しかった。向かうところ敵なしで、予備登録を済ませている宝塚記念は見送るとの事だが、オーストラリアに行っても地元香港に戻っても最強の中距離王として君臨してくれるはず。日本馬との対戦は暮れの香港になるだろうが、そこでも当然期待したい。
本命のヴォイッジバブルは17着。パドックを見た印象ではどうしてもロマンチックウォリアーと比べると劣る感じで、馬体の凄みという点では平凡だったかなと思う。思ったよりもロベルトロベルトしてない足元で、広いコースでも脚は使えそうだなという感じでもあった。スタートは良くて道中はロマンチックウォリアーを見ながら。過去に対戦したこともあるだけに相手はこの馬だけという位置の取り方、運び方で決して悪い道中ではなかったように思う。ただ直線を迎えると特に見せ場もないまま後退。ペース的にも脚が溜まる展開だったと思うし、脚を使って位置を取ったわけでもないので内容としては食い足りない。追い出すとドンドン頭が上がって推進力を失う走りになっていたから、何かアクシデントか、それともチークを付けていたので集中力の問題か。こんなものではないはずなので、地元に戻って改めてというところだろう。
2着ナミュールは脚の溜めやすい流れになった事、前走よりもペースが落ち着いたことが最大の好走要因ではあるが、それだけに3枠のスローだとゴチャついて不利を貰うのでは、という懸念が個人的にはあった。しかし実際は割とスタートしてすぐに外が空いてフリーになった。こうなると後は脚を使うだけ。直線の脚色はロマンチックウォリアーを差し切るかと思ったほどだったが、最後は王者に屈した。内容は前走より見た目にも良くなったし能力はGⅠでも通用するが、勝った馬がこの馬と同じ中距離馬であることを踏まえると、着差以上に勝ち馬との力差がある。日本国内なら好勝負出来るだろうが、再び海外に目を向けるのであれば更なるレベルアップが必要。今のまま暮れに香港に行っても返り討ちだろう。マイルだと特に。ロマンチックウォリアーが日本馬を倒しまくってきたという実績もあったのだろうが、日本のマイルで1番人気になったという事は、ファンの目から見ても今の日本国内に横綱、エースと呼べるようなマイラーがいないという裏返しでもある。今回も46.4-45.9の後傾気味ラップの緩い流れになったが、今の短距離路線は本当に緩いペースが多すぎる。強い馬が出るときは、強い逃げ馬もセットという事が多い。それがハクサンムーンであったりキタサンブラックであったり、パンサラッサであったり。そういった馬がいないからペースを引き上げることが出来ず追走力を磨くことが出来ていない。激流に揉まれない事には根本的な能力の引き上げは成し遂げられないのだ。ナミュールのポテンシャルに実績が付いてこないのはこういった成長する循環機能が働いていない側面もある。実に勿体ない。
3着ソウルラッシュはペースも馬場も位置もとても良かったと思うが、それで3着だとやはりGⅠで足りないところがあると認めざるを得ないだろう。年齢的にもここから一皮剥けるとは言い難いし、道悪の重賞はまだしも、良馬場で若い世代が来た時はちょっと苦しくなりそう。4着ガイアフォースはロマンチックウォリアーの後ろだったが、このペースだったらもう一列前が欲しかった。フェブラリーで差し込んでこれたのは展開面の恩恵もあっただけに、スローで上がり勝負という事になるとやや分が悪い。馬場は問題なかっただけに展開の分の4着といえるかも。ある意味後傾マイル戦の被害者、という言い方もできるか。ダートでも問題ないが、今の時期だったら時計の掛かる芝で十分出番はある。夏は芝、冬はダートという使い分けも面白そう。5着セリフォスは叩き2としてはまあまあのテンションだと思ったが、レースではやはり後ろでそろっと乗る他ないようで、GⅠでの魅力という意味ではやはり下がってしまうなという印象。鞍上は馬場を敗因として挙げていたが、それこそロマンチックウォリアーは得手としていない馬場だったし、走る馬場はみんな同じ。単純に力の差だろう。気性的に使い込むと難しいタイプなのはわかるが、ここからもう一度GⅠを勝つには能力のベースアップは必須。もっと自分で勝負を決められる競馬が出来るといいのだけど。6着ジオグリフは喉に疾患を抱えているだけに雨の短縮というのはかなり走りやすい状況だったはず。スローのインのポケットという位置も良かったし、出来ることはやり尽くしたのではないか。ストライクゾーンが狭い馬なので、基本的には諸々状況を頼らないと買いづらい馬ではあるが、牝系通りのビュンとした脚を引き出せる展開ならまだまだやれる。夏競馬を使うなら小倉の中京記念が良さそう。宝塚記念はちょっとゾーンからずれているイメージ。人気上位で決まった中で、新興勢力と目されたパラレルヴィジョンは13着。前走で稍重馬場を勝利したとはいえ、足元的には良馬場がベター。アールブリュットの子供で近親にはメートルダールがいるが、この馬はどちらかというと母父マクフィっぽい馬なので良馬場で巡行した方が良さを出せるだろう。敷居も高かったとは思うし、今回の1戦を成長に繋げたい。14着ウインカーネリアンは今年逃げずに運んだが、馬場を思えばおおよそ昨年に似たペース配分では走っているはずで、結局GⅠだとちょっと、というところを隠せなかった。どうせ走るならもっと雨が降って欲しかったかも。
単純にロマンチックウォリアーは強かったし流石一流馬だと思った反面、やはり今の日本競馬、特に短距離界の在り方はいい方向に向かっていないという事を改めて見せつけられたという感想が出た今年の安田記念。今の状態のままだと日本馬が短距離、マイルのカテゴリーで香港勢に勝つ日は来ないでしょう。何度も何度も強いスプリンターがいない、マイラーがいないと書くのは正直またかという思いでいい気分ではないけども、そう書かない事には自分の意見は示せないわけで。もっと攻められる、視野の広い騎手と調教師で溢れてくれることを切に願う。