かっさんのつづれなるままに808

旅から帰ってみると家はすっからかん。二階に上がって見渡すと、本という本はすべてなくなり、本棚ががらんと口を開けている。これってナニ? 慌てて駆け下り、兄姉に聞くと、「多美ちゃんが、あなたが認知症になったので、別かれることにしたの、と言っていたよ」とのこと。多美ちゃん、多美ちゃん、鹿児島の多美ちゃんは、ぼくの奥さんだったけと思って電話しても、なかなか出ない。そこうするうちにいつもものごとくおしっこしたくなった。おしっこしていると、そういえばぼくの奥さんは貞子さんだ。と、夢から覚めて、今度は安心して、本物のトイレへ。こんな人騒がせな夢を見たのも、史郎さんが空き家の解体の仕事しているからだと思った。年に何回か解体の仕事について、そのつど、石臼や手水鉢とか持ってくる。今回の解体は元社長宅だったみたいで、豪華な置物を持って帰ってきた。その一つが、左右合わせて一メートルはあろうかと思われる水牛の角の置物。買えば数万円するだろうと思われる立派なものだ。それを私は机の上に飾っている。多分それが、私を夢でうならせたのだろう。史郎さんは史郎さんで、木の根っこで作った立派な鷹と、金属製のシーサー。これも買えば相当な値が付くだろう。史郎さんは夢を見なかったのだろうか。まあ夢でよかった。もしぼくが認知症になって貞子さんが家を出てしまったらと思うと、ぞっとする。夢が夢で終わるところがいいなと思った。