「魚を食べることを教えるな。魚の取り方を教えよ。」 佐々木将人先生の教えです。
魚を食べることを教えるだけであれば、今ある魚を食べ終えたら、食べるものがなくなり、食に困ることになる。
魚の取り方を教えれば、今食べている魚がなくなっても、新しく魚を取り、食に困るのことがない、という教えです。

 前号では、将来も、中今塾が継続するためには、感じる受けが取れることが大事になると書きました。

その感じる受けを取るためにも、関節を柔らかくということも重視していきたいと考えています。
関節とは、手首だけでなく、足首、肘、膝、股関節、肩、腰等のことをと思っています。
 最近の小学生は、和式トイレを座って利用できないという新聞記事を読んだことがあります。
蹲踞の姿勢ができないので、後ろに倒れてしまう子供があるそうです。
昔は、和式トイレでの蹲踞の姿勢が、知らず知らずのうちにふくらはぎの力を強くしたり、足首を柔らかくしていたのだと思います。
最近は和式トイレを使用することは少ないと思いますので、稽古の前の準備運動で、脚の屈伸運動を行う時に、かかとを上げずに行うことで、ふくらはぎ、足首等の力を強化するようにと指導しています。
子供だけでなく、大人の方も心掛けていただきたいと思います。
最近の説では、六十歳を越えても身体は鍛えられると言われています。
準備運動の時に、身体のどの部分を、緩めているか、鍛えているか意識して行うことで、効果は変わってきます。
その人それぞれの身体の特性により、身体が硬いと思われる方もあると思いますが、それでも、1㎜でも、0.1㎜でも柔らかくしようと意識するだけでも変わってきます。
子供達と一緒に準備運動をする時、子供達は見ています。
身体は硬くても柔らかくしようと努力しているか、手を緩めているか。
「子供は大人の言うようにはしない。大人のするようにする。」という言葉があります。
大人の方も、まず自ら率先垂範するという気持ちで、準備運動を行う必要があると思っています。
 また、最近、準備運動で、二教での腕立て伏せを行っています。
慣れていないと、手首の痛さばかりが気になり、肘を曲げるどころか、腕で体を支えることさえできませんが、これも、手首を柔らかくするためにと行っています。
慣れてくると少しづつでも肘を曲げることができるようになります。
二教、や三教等の締め技、固め技は、「痛い!! 痛い!!」と相手に言わせ、痛めるために行っているのではありません。
むしろ、掛けられる側が、手首、肘などの関節を柔らかくするために行っているといえると思います。
「二教で締められ、締めを緩められた時に、関節に一気に血流が流れる。そのことで、関節に淀んでいた滓が流され、血流が良くなる。」と教わったことがあります。
長く合気道を続けられる身体を作るためにも、関節を柔らかくすることが大事であると思います。
関節を柔らかくすることで、手足をしなやかにし、俊敏に反応できる身体をつくることで、感じる稽古ができるようになると思いますし、合気道の理解、自らの合気道の技の向上にもつながるものだと思っています。