【読書】竹中労 人と思考の軌跡 左右を越境するアナーキスト/鈴木邦男 | THE ONE NIGHT STAND~NEVER END TOUR~

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「40歳からの〇〇学 ~いつまでアラフォーと言えるのか?な日々~」から改題。
書評ブログを装いながら、日々のよしなごとを、一話完結で積み重ねていくことを目指しています。

竹中労 人と思考の軌跡 左右を越境するアナーキスト/鈴木邦男
新・右翼団体「一水会」の創始者で、現顧問の鈴木邦男さんが、
左翼の大物だった竹中労について書いています。
竹中労、とぃっても知らない人が増えてきているのかもしれませんが
こんな人です。⇒「竹中労 - Wikipedia

左翼(という枠にくくれるようない人ではないですが)の大物について、
右翼が評伝を書く。ちょっと不思議に思えることですが、
読み進めていけば不思議でもなんでもないことがわかります。

書かれているのは、
鈴木さんがいかに竹中労さんの影響を受けたか、かわいがってもらっていたか、ということ。そして、鈴木さんの兄貴分である野村秋介さんと竹中労さんとの友情についても繰り返し言及します。

右翼と左翼の違いを書き始めると長くなるので(苦笑)やめておきますが、
とにかく考えがまるで反対の人がどうしてこれだけ深い交流ができたのか?
僕の中に浮かんだのは、
山田ズーニーさんの
あなたの話はなぜ「通じない」のか]

の一節
「意見」を共有するのは難しくても、「問い」なら共有でき、信頼感も増す。
でした。

まさに「思想」は共有できなくても現状に対する、あるいは将来に対する「問題意識」は共有できる、それを共有できるから、信頼しあえる。
逆に「思想」が同じでも必ずしも信頼しあえるものではない、結局は人なのだ、
ということが、この本の根底には一貫して流れています。

鈴木さんは別の著書の中で、竹中さんに紹介されて親しくなった遠藤誠弁護士(帝銀事件の主任弁護士)について次のように書いています。

 不思議な人だった。考えはまったく違うはずなのに、傍にいるとホッとし、安心する。なんでも話せる。「主張やスローガンじゃない、人間だよな」と思えるようになったのは、遠藤先生のおかげだった。
 逆に、「お前とは考えが同じだ。ともに闘おう」と言う右翼でもあまり一緒にいたくない人がいる。「天皇制を守る」という点では同じだ。でも、「その運動をやるためには金が必要だ。荒っぽい集め方をしても、きれいに使えばいいんだ」と言う右翼もいるからだ。(「
愛国と憂国と売国」p134)

政治ニュースなどでよく「政策の一致が重要」という話をしているのを聞きますが、僕はそれが重要だとはやっぱり思わない。
政策は話し合いで、議論を通して変えることができる。
もっと重要なことは「問」を共有すること。なぜなら、それは同じ熱意でものごとを見つめている証しだと思うからです。
そしてそれは別に、政治的な場面だけでなく、
普通の企業の中でも、プライベートな中にも、
同じようなことが言えるのではないかと思っています。