危機が起きて、通貨体系の基礎にある自国通貨建て国債市場が崩壊しそうになった時の中央銀行の行動
秘書です。
昨晩報道されたOECDの玉木林太郎事務次長(前財務官)のインタビュー。
「危機が起きて、通貨体系の基礎にある自国通貨建て国債市場が崩壊しそうになった時に、中央銀行がそれを支えること自体はモラルハザードだとは言わない。それほど今は危機的状況だ」
「欧州の望ましくない展開が、円相場、特に円・ドル相場に影響するかはわからない」
日本の当局の見解は?
欧州債務危機解決には、ECBの積極的な行動とEUの決断が不可欠=玉木前財務官
2011年 12月 2日 21:43 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTJE7B100420111202?sp=true
[東京 2日 ロイター] 経済協力開発機構(OECD)の玉木林太郎事務次長(前財務官)は2日、ロイターのインタビューに応じ、深刻化する欧州債務問題の解決には欧州中央銀行(ECB)の積極的な行動と財政統合を目指す欧州連合(EU)の決断が不可欠だとの認識を示した。ECBによる国債買い入れについても、危機の時にモラルハザードとは言えないと指摘。もはや欧州の政治的なリーダーシップの問題だと語り、ユーロ圏共同債やECBの一段の介入に反対しているドイツに対しては一定の方針転換を求めた。
インタビューの概要は以下の通り。
──OECDが28日に発表したエコノミック・アウトルックでは、下方リスクが顕在化すれば2012年には日米欧はマイナス経済に転落する見通し。その可能性は。
「アウトルックは、普通の経済状況であればいわゆる経済見通しだが、今回は数字そのものより何をなすべきかに焦点が当たっている。どのような政策対応をすれば、最悪のケースから抜け出て、今の状況で望める良いシナリオに移行できるかに注目すべきという性格のものになっている。その意味で短期的な措置として、ECBのより大規模な介入と各国政府が中期的なコミットメントをすることが政策として期待されることとして挙げている。それらをぜひ実行すべきとのメッセージだ。ECB(理事会)と、12月8日、9日に開かれるEU首脳会議がどういう結論を出してくるか、今まさに、皆が固唾を呑む展開になっている」
──日米欧の主要な中央銀行が外貨融通の拡充で合意した。評価は。
「これは先進国中銀間のセーフティーネットとして非常に良く機能する。必ずやらなければならないことで歓迎以外の何ものでもない。しかし、流動性を供給して困難を感じている銀行を救うのはいいが、それをしたからといって問題の解決になるわけではない。本当にやらなければならないのは、ECBの行動と財政面での統合を目指すEUの決断だ」
──ECBがさらに国債を購入することになれば、中銀の信認が揺らぎ将来のインフレを引き起こすとの慎重意見がある。反対するドイツとどう折り合いをつけ、解決策は導くことができるか。
「危機が起きて、通貨体系の基礎にある自国通貨建て国債市場が崩壊しそうになった時に、中央銀行がそれを支えること自体はモラルハザードだとは言わない。それほど今は危機的状況だ」
「実際買うか買わないか別にして、ECB自体が買える権限という意味では普通の中央銀行ではない。ECBは財政支援をしてはいけないという条約のもとに設立され、資本ベースも極めて限定されている。各国の財政の寄せ集めでできた銀行で、いわゆる『最後の貸し手』としての機能は限られていると理解している」
「ECBのより積極的な行動と財政統合に向けた財政規律の制度的強化、いずれも、ドイツが一定の方針転換しなければできないことは明らかで、ドイツが正しい判断をしてくれること(を望む)。国民感情を乗り越えて、明確なメッセージを指導者が発することが今の非常事態を打開するためにはどうしても必要だ。今や、ユーロ圏の問題は、技術的な問題ではなく、極めて政治のリーダーシップの問題になっている」
「9月に日本で講演した際も、ギリシャが離脱すれば解決するんじゃないかという理解だった。日本もシートベルトを締める必要があると言ったが、大げさなという反応だった」
──パリ在住で、より危機感を肌で感じるということか。
「東京にいるより危機感は強い。当然、政策当局者の対応が目につくが、カーブを曲がり損ねて、ビハインド・ザ・カーブ(対応が後手に回る)の連続。私はユーロは絶対システムを維持すべきで、一部でも国が離脱すべきではないと信じている。ユーロは単なる制度ではなく、もはや歴史的産物だ。欧州の経済統合の行き着く必然で、欧州にとって唯一無二のものになっていることを理解してくださいと言っているが、それでもだんだん心配になってくる事態の連続だ」
──欧州の金融機関の新興国に対する与信は非常に高い。資金の引き揚げが新興国経済に与える影響は。
「もちろんネガティブだろうが、代替が円滑にいくかどうかの問題で、自動的に新興国にブレーキをかけるかどうかはわからない。考えておかなければならないのは、金融システム全体の信用収縮につながれば、新興国だけでなく先進国経済にも影響は及ぶ」
──来週のECB理事会で利下げやさらなる国債購入の決定を期待するのか。
「財政規律のシステムを作ることが大事で、まずは首脳会議サミットではないか。ECBの行動を予言するつもりはないが、定例の理事会でなくてもできる。前提条件が整わなければ基本的にできない」
──円高を含め、日本経済への影響は。
「欧州の望ましくない展開が、円相場、特に円・ドル相場に影響するかはわからない。OECDが強調したいのは、中期的な財政構造改革に対するコミットを揺るぎないものにすること。なし崩し的にしてしまうことが一番危ない。基礎的財政収支(プライマリーバランス)目標を堅持することが、当面の短期的な復興対策をやっていく過程で、『背骨』としてなければならないというのがわれわれの認識だ。(消費税増税の)筋書きなしでプライマリーバランスの回復シナリオを描く人はいない」
──日本の為替介入について国際的な理解は得られているか。
「(介入が理解されたかどうかは)不毛な議論だ。G7は介入を否定していない。われわれが合意していることは、為替の過度な変動が経済にとってマイナスだということに尽きる。為替の動きが過度に変動し、経済に影響するかどうかをまず議論すべきだ」
──欧州債務危機解決に向けて、日本がとるべきスタンスは。
「EFSF債をローンチする場合に、最初に日本政府が買う意思を表明し、大規模かつ安定した投資家としてEFSF債を購入すると(表明したこと)は、欧州での評価は高い。資本市場では新しい銘柄は皆警戒するからだ。個別の債券を買うというアプローチより、システムを安定させるためのサポートをしていることが大事だ」
「今は日本がいくら金を出すということより、まさに欧州の政治の意思、政治的なリーダーシップの問題に問題が収れんしてきている。ここで求めるべきは、欧州に指導力を期待するということに尽きる」
(ロイターニュース 吉川裕子 梶本哲史)
→OECDのアウトルックはどんな提言をしているのか?
2011-11-28 20:44:00
OECD提言の中で、円高・デフレ・増税統一戦線派にとって不都合そうな提言部分
テーマ:秘書ひしょ
http://ameblo.jp/nakagawahidenao/entry-11092026363.html
OECD東京センターのエコノミックアウトルック№90の日本語資料より
http://www.oecdtokyo2.org/pdf/theme_pdf/macroeconomics_pdf/20111128eo90.pdf
・5年間でGDP の4%程度にのぼる復興支出は、短期的に日本
の財政状況をさらに悪化させている。2012-13 年における財政
赤字が9½%程度(GDP 比、一時要因を除く。)であり、グロ
スの公的債務残高がほぼ230%(GDP 比)に上昇すると見込ま
れる中、日本は、経済活動の新たな弱さに対処するため追加
的な財政対策を行う余地はない。そうした事態においては、
いずれにしても比較的に小規模ではあるが、自動安定化機能
を少なくとも部分的に弱めざるをえないであろう。
2020 年度までに基礎的財政収支黒字を実現し、公的債務残高
比率を安定化させるといった政府の目標を達成するために詳
細かつ信認のおける財政健全化計画が最優先事項である。財
政状況の大幅な悪化及び今後長くにわたる財政健全化の期間
を考慮する場合、財政政策の枠組みの改善はそうした計画の
信頼性を強化することに役立つであろう。鍵となる改革は、
政策策定過程から一定の距離をおいて客観的な財政評価機能
を果たす会議体の創設や中長期の財政目標についてより強い
法的根拠を設けることを含むべきである。
実質的なゼロ金利政策の維持に加え、日本銀行は、共通担保
資金供給オペレーションや資産買入プログラムをさらに拡大
させるべきである。こうした量的緩和策は経済の弱さに対処
するため更に拡大され、10 年間以上続くデフレの明確な終焉
をもたらすことに役立つべきである。
日本のグローバル経済への統合を促進することは成長を押し
上げるであろう。新成長戦略に沿って輸入、資本、労働の流
入にかかる障壁を除くことは、それゆえに最優先事項であ
る。高い水準の農業保護の引き下げとともに、そうした改革
は、TPP や主要な貿易相手国との自由貿易協定への参加を促
すであろう。
財政健全化に向け歳入を生み出すことに加え、経済成長を促
進するために税制改革が優先事項となる。改革により直接税
の課税ベースを拡大する一方で、法人税率を引き下げるべき
である。他の税に比べ経済成長への負の影響がより小さい消
費税は追加的な歳入の主要な源となるべきである。グリーン
成長の促進に役立つことを含め、環境税もまた担うべき役割
を持つ。
昨晩報道されたOECDの玉木林太郎事務次長(前財務官)のインタビュー。
「危機が起きて、通貨体系の基礎にある自国通貨建て国債市場が崩壊しそうになった時に、中央銀行がそれを支えること自体はモラルハザードだとは言わない。それほど今は危機的状況だ」
「欧州の望ましくない展開が、円相場、特に円・ドル相場に影響するかはわからない」
日本の当局の見解は?
欧州債務危機解決には、ECBの積極的な行動とEUの決断が不可欠=玉木前財務官
2011年 12月 2日 21:43 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTJE7B100420111202?sp=true
[東京 2日 ロイター] 経済協力開発機構(OECD)の玉木林太郎事務次長(前財務官)は2日、ロイターのインタビューに応じ、深刻化する欧州債務問題の解決には欧州中央銀行(ECB)の積極的な行動と財政統合を目指す欧州連合(EU)の決断が不可欠だとの認識を示した。ECBによる国債買い入れについても、危機の時にモラルハザードとは言えないと指摘。もはや欧州の政治的なリーダーシップの問題だと語り、ユーロ圏共同債やECBの一段の介入に反対しているドイツに対しては一定の方針転換を求めた。
インタビューの概要は以下の通り。
──OECDが28日に発表したエコノミック・アウトルックでは、下方リスクが顕在化すれば2012年には日米欧はマイナス経済に転落する見通し。その可能性は。
「アウトルックは、普通の経済状況であればいわゆる経済見通しだが、今回は数字そのものより何をなすべきかに焦点が当たっている。どのような政策対応をすれば、最悪のケースから抜け出て、今の状況で望める良いシナリオに移行できるかに注目すべきという性格のものになっている。その意味で短期的な措置として、ECBのより大規模な介入と各国政府が中期的なコミットメントをすることが政策として期待されることとして挙げている。それらをぜひ実行すべきとのメッセージだ。ECB(理事会)と、12月8日、9日に開かれるEU首脳会議がどういう結論を出してくるか、今まさに、皆が固唾を呑む展開になっている」
──日米欧の主要な中央銀行が外貨融通の拡充で合意した。評価は。
「これは先進国中銀間のセーフティーネットとして非常に良く機能する。必ずやらなければならないことで歓迎以外の何ものでもない。しかし、流動性を供給して困難を感じている銀行を救うのはいいが、それをしたからといって問題の解決になるわけではない。本当にやらなければならないのは、ECBの行動と財政面での統合を目指すEUの決断だ」
──ECBがさらに国債を購入することになれば、中銀の信認が揺らぎ将来のインフレを引き起こすとの慎重意見がある。反対するドイツとどう折り合いをつけ、解決策は導くことができるか。
「危機が起きて、通貨体系の基礎にある自国通貨建て国債市場が崩壊しそうになった時に、中央銀行がそれを支えること自体はモラルハザードだとは言わない。それほど今は危機的状況だ」
「実際買うか買わないか別にして、ECB自体が買える権限という意味では普通の中央銀行ではない。ECBは財政支援をしてはいけないという条約のもとに設立され、資本ベースも極めて限定されている。各国の財政の寄せ集めでできた銀行で、いわゆる『最後の貸し手』としての機能は限られていると理解している」
「ECBのより積極的な行動と財政統合に向けた財政規律の制度的強化、いずれも、ドイツが一定の方針転換しなければできないことは明らかで、ドイツが正しい判断をしてくれること(を望む)。国民感情を乗り越えて、明確なメッセージを指導者が発することが今の非常事態を打開するためにはどうしても必要だ。今や、ユーロ圏の問題は、技術的な問題ではなく、極めて政治のリーダーシップの問題になっている」
「9月に日本で講演した際も、ギリシャが離脱すれば解決するんじゃないかという理解だった。日本もシートベルトを締める必要があると言ったが、大げさなという反応だった」
──パリ在住で、より危機感を肌で感じるということか。
「東京にいるより危機感は強い。当然、政策当局者の対応が目につくが、カーブを曲がり損ねて、ビハインド・ザ・カーブ(対応が後手に回る)の連続。私はユーロは絶対システムを維持すべきで、一部でも国が離脱すべきではないと信じている。ユーロは単なる制度ではなく、もはや歴史的産物だ。欧州の経済統合の行き着く必然で、欧州にとって唯一無二のものになっていることを理解してくださいと言っているが、それでもだんだん心配になってくる事態の連続だ」
──欧州の金融機関の新興国に対する与信は非常に高い。資金の引き揚げが新興国経済に与える影響は。
「もちろんネガティブだろうが、代替が円滑にいくかどうかの問題で、自動的に新興国にブレーキをかけるかどうかはわからない。考えておかなければならないのは、金融システム全体の信用収縮につながれば、新興国だけでなく先進国経済にも影響は及ぶ」
──来週のECB理事会で利下げやさらなる国債購入の決定を期待するのか。
「財政規律のシステムを作ることが大事で、まずは首脳会議サミットではないか。ECBの行動を予言するつもりはないが、定例の理事会でなくてもできる。前提条件が整わなければ基本的にできない」
──円高を含め、日本経済への影響は。
「欧州の望ましくない展開が、円相場、特に円・ドル相場に影響するかはわからない。OECDが強調したいのは、中期的な財政構造改革に対するコミットを揺るぎないものにすること。なし崩し的にしてしまうことが一番危ない。基礎的財政収支(プライマリーバランス)目標を堅持することが、当面の短期的な復興対策をやっていく過程で、『背骨』としてなければならないというのがわれわれの認識だ。(消費税増税の)筋書きなしでプライマリーバランスの回復シナリオを描く人はいない」
──日本の為替介入について国際的な理解は得られているか。
「(介入が理解されたかどうかは)不毛な議論だ。G7は介入を否定していない。われわれが合意していることは、為替の過度な変動が経済にとってマイナスだということに尽きる。為替の動きが過度に変動し、経済に影響するかどうかをまず議論すべきだ」
──欧州債務危機解決に向けて、日本がとるべきスタンスは。
「EFSF債をローンチする場合に、最初に日本政府が買う意思を表明し、大規模かつ安定した投資家としてEFSF債を購入すると(表明したこと)は、欧州での評価は高い。資本市場では新しい銘柄は皆警戒するからだ。個別の債券を買うというアプローチより、システムを安定させるためのサポートをしていることが大事だ」
「今は日本がいくら金を出すということより、まさに欧州の政治の意思、政治的なリーダーシップの問題に問題が収れんしてきている。ここで求めるべきは、欧州に指導力を期待するということに尽きる」
(ロイターニュース 吉川裕子 梶本哲史)
→OECDのアウトルックはどんな提言をしているのか?
2011-11-28 20:44:00
OECD提言の中で、円高・デフレ・増税統一戦線派にとって不都合そうな提言部分
テーマ:秘書ひしょ
http://ameblo.jp/nakagawahidenao/entry-11092026363.html
OECD東京センターのエコノミックアウトルック№90の日本語資料より
http://www.oecdtokyo2.org/pdf/theme_pdf/macroeconomics_pdf/20111128eo90.pdf
・5年間でGDP の4%程度にのぼる復興支出は、短期的に日本
の財政状況をさらに悪化させている。2012-13 年における財政
赤字が9½%程度(GDP 比、一時要因を除く。)であり、グロ
スの公的債務残高がほぼ230%(GDP 比)に上昇すると見込ま
れる中、日本は、経済活動の新たな弱さに対処するため追加
的な財政対策を行う余地はない。そうした事態においては、
いずれにしても比較的に小規模ではあるが、自動安定化機能
を少なくとも部分的に弱めざるをえないであろう。
2020 年度までに基礎的財政収支黒字を実現し、公的債務残高
比率を安定化させるといった政府の目標を達成するために詳
細かつ信認のおける財政健全化計画が最優先事項である。財
政状況の大幅な悪化及び今後長くにわたる財政健全化の期間
を考慮する場合、財政政策の枠組みの改善はそうした計画の
信頼性を強化することに役立つであろう。鍵となる改革は、
政策策定過程から一定の距離をおいて客観的な財政評価機能
を果たす会議体の創設や中長期の財政目標についてより強い
法的根拠を設けることを含むべきである。
実質的なゼロ金利政策の維持に加え、日本銀行は、共通担保
資金供給オペレーションや資産買入プログラムをさらに拡大
させるべきである。こうした量的緩和策は経済の弱さに対処
するため更に拡大され、10 年間以上続くデフレの明確な終焉
をもたらすことに役立つべきである。
日本のグローバル経済への統合を促進することは成長を押し
上げるであろう。新成長戦略に沿って輸入、資本、労働の流
入にかかる障壁を除くことは、それゆえに最優先事項であ
る。高い水準の農業保護の引き下げとともに、そうした改革
は、TPP や主要な貿易相手国との自由貿易協定への参加を促
すであろう。
財政健全化に向け歳入を生み出すことに加え、経済成長を促
進するために税制改革が優先事項となる。改革により直接税
の課税ベースを拡大する一方で、法人税率を引き下げるべき
である。他の税に比べ経済成長への負の影響がより小さい消
費税は追加的な歳入の主要な源となるべきである。グリーン
成長の促進に役立つことを含め、環境税もまた担うべき役割
を持つ。