地元キャッスル・シネマの月曜割引(£6)でアニメーション映画『Kensuke's Kingdom / ケンスケの王国』(2023)を観た。Neil BoyleとKirk Hendry共同監督で有名な仏アヌシー・インターナショナル・アニメーション映画フェスティバルの出品作品。スマホチケットを係員に見せたとき、「これ凄くいい映画ですよ、オススメ」と言われ、「予告編で風景がとても綺麗だったから観ることにした」と返答した。映画館の人が勧めるだけあって、観終わった後「時間に追われてても無理して来て良かった」と思った。そもそも、原作は英国児童文学のクラシックと呼ばれる同名小説で、著者は『戦火の馬』で名高いマイケル・モーパーゴ。自身の体験を膨らませて創作したという。さて、あらすじは…

 

  家族に連れられてヨットで世界一周の航海に出たマイケル (CV:アーロン・マクレガー)。嵐に見舞われ、マイケルと愛犬ステラは船外に流され、太平洋の孤島にたどり着き、そこで生き延びるために奮闘する。生死をかけた戦いの後、謎の日本人ケンスケ (CV: 渡辺謙 )はしぶしぶマイケルを自分の世界に迎え入れ、二人は友情を育み始める。しかし、ケンスケが島に作り上げた脆い世界を破壊しようとする事件が起こり、二人は勇気と技術と機知を尽くして彼の王国を救うために協力する (IMDbより抜粋)。

 

 スクリーン2だったので大型テレビの数倍の大きさだったのは残念。映画の中の自然描写や風景が美しい上に、日本人であるケンスケが描く絵や彼の家族に関する追憶部分は独特な墨絵風の手描きアニメーションでセンスが良い。ただネタバレになるが、ケンスケの家族が長崎で被爆したらしい、という設定は予想外。しかも旧日本兵ケンスケ役の渡辺謙が日本語しか話さないので「字幕無しで良いのだろうか?」と心配になった。観客の中で会話を全て理解できているのは自分だけか(!)とやや申し訳ない感じ。

 

 最後に絵について。日本のアニメも風景が綺麗だけれど、光がキラキラしすぎで気になることがある。しかし、この作品はもっと現実に近い感じなので、まるで自分が孤島に連れて行かれたかのような錯覚を覚え、映画の世界に没入させてくれる。ケンスケが長年かけて作った樹上建築もデザイン的に優れているので、大学の講義で使おうかと思うほど。おまけに登場人物ならぬ登場動物はボーダーコリーの愛犬ステラをはじめオランウータンやウミガメの赤ちゃんたちもみな可愛い。登場人物たちは目が小さめで見慣れない造形なので、初めは違和感があったけれど…児童文学が原作なので子供向けではあるけれど、大人も楽しめるし、現実を忘れさせてくれるパワフルなアニメーション映画。

 

日本語版予告編はまだ見当たらない