Hackney Picturehouseの月曜割引でアリーチェ・ロルヴァケル監督『墓泥棒と失われた女神/La Chimera』(2023) を観た。邦題からはすぐ内容が分かるけれど、原題 La Chimera (届かぬ夢という意味)からは見当がつかない上にコメディとは!?…考古学者がどんな面白いことをするのか、程度の知識で観始めたところ、予想から大きく外れた展開。そもそも映画が始まる前にロルヴァケル監督から5分程度の観客への挨拶があり、インディーズ風味溢れる印象で「これはカンヌ映画祭参加時に付け加えたのだろうか?」と疑問。しかも、映画が始まってからも設定が1980年代 (どちらかと言えば1960年代に見えるが)なためか、イタリアの小都市を描いているからか、ヒロインらしき人が手編みっぽいドレスを着ているからか、全体的にダサ可愛くて懐かしい感じ。さて、あらすじは…

  

 手に入れようとしても決して手に入らないもの、それが「キメラ」。誰もがそれぞれの「キメラ」を持っている。 古代の副葬品や考古学的お宝を盗む「墓荒らし団」にとって、「キメラ」はつまらない仕事からの解放と簡単に金持ちになれるという夢のこと。 刑務所帰りの英国人アーサー(ジョシュ・オコーナー)にとって、「キメラ」は失った女性ベニアミーナ。 彼女を見つけるために、アーサーは目に見えないものに挑み、あらゆる場所を探し、地中へと進む。神話に語られている死後の世界への扉を探して。 生者と死者、森と都市、祝祭と孤独の間を行き来する冒険の旅の中で、彼らの絡み合った運命が展開する。すべてはキメラを探すため…(Hackney Picturehouse Recommends より翻訳)

 

 考古学者の話というから、自分はインディー・ジョーンズみたいな冒険物を期待していたのだ、と後で気づいた。しかし、予想とは全然違って主人公アーサーはやさぐれて冴えない上に、墓を探す時にコックリさんのような、占いのような木の枝を使うのが胡散臭い。でも、彼が探し当てた場所には必ず墓の入り口があるので、考古学者としては貴重な超能力に違いない。で、映画を観て初めて「考古学者と墓泥棒は紙一重」と気づいた。そういえば、エジプトでピラミッドを荒らしまくった英国人考古学者たちはファラオに呪われた、とか聞いた覚えがある。そういう意味で全体的に見ればこの映画はコメディなのだが、ベニアミーナの喪失という重大テーマがあるので、死の気配が感じられ自暴自棄なアーサーの描写もあって悲劇にも見える。それでも、アーサーがベニアミーナを本当に愛していたことが伝わってくるので、観終わってから「これで良かったのだ」と温かい気持ちにさせてくれる映画。

 

   ところで、ベニアミーナの母役は見覚えがあるけれど、誰?と思っていたら『ホワイトナイツ』(1984)『ブルー・ベルベット』(1985)のイザベラ・ロッセリーニだった。ロッセリーニの母親であるイングリッド・バーグマンを『オリエント急行殺人事件』(1974)で初めて観た時と同レベルの衝撃…