土曜日の午後Roca London Galleryで開催中の『Small Spaces in the City』展に行った。Roca London Galleryは頓挫した東京オリンピック・スタジアム計画で知られるザハ・ハディド・アーキテクトの設計。Roca自体は浴槽やシンク、便器など水回り機器を販売するスペイン企業でハディドやジョルジョ・アルマーニとのコラボレーションで多様なデザインを展開している。日本でいえばTOTOのギャラリー間のロンドン版と言える。

 

「小さな部屋は精神を鍛錬し、大きな部屋は気を散らすため、芸術家のスタジオは小さな空間であるべきだ。」 レオナルド・ダ・ヴィンチ (1452-1519)

 

 ダ・ヴィンチの引用と ウィトルウィウス的人体図 のイラストから始まる『Small Spaces in the City:Rethinking Inside the Box』展では世界中の都市で見られる小さな空間に住む人々に焦点を当てている。香港、ロンドン、東京、パリ、ベルリン、ソウル、ニューヨークなどで動いたり折りたためる家具や、天井高を利用して小さな空間を重層で利用するデザイン、テーブルを上昇させて天井照明に組み込むデザインなどを紹介している。東京は伝統的に小空間でのミニマムな暮らしを体現する歴史があるので、リカちゃん人形の家も含め最も多くの実例が紹介されていた。中でもこの展覧会のポスターとして大々的に使われている保坂猛氏設計の19㎡(12畳弱)の自邸が衝撃的。天井高を利用して上部に寝室、居間は前の私道を取り込んで緑あふれる都心のオアシスのような、街に開いた家は忘れがたい。

 

 ただ、土曜の午後なのに訪問者が私と友人だけで、暇なのかギャラリーの人たちと随分話をするはめになった。たまたま直近のImperial Wharf駅がこの日は閉鎖されていたせいかも知れないけれど、もうすぐこの展覧会も終了だし、充実した展示なのでもっと注目されて賑わってもよいのに…(おまけに入場料タダだし)。展覧会自体よりも面積的にもデザイン的にもRocaショールームの方が目立って主役になってしまうのが難点かも。『Small Spaces in the City』展は2024年3月16日まで(日曜休)

 

『Small Spaces in the City:Rethinking Inside the Box』展

保坂猛氏設計の19㎡の自邸

Roca London Galleryは水の流れをデザイン化した空間で未来っぽいインテリア