今日の午後、ダリッジ・ピクチャー・ギャラリーで開催中の『ルーベンスと女性』展に行ってきた。ルーベンスと言えば「宗教画という名目で肉感的な女性ばかり描いている画家」という印象が強かったのだが、この展覧会を見て考えを改めさせられた。ルーベンスは6か国語を流ちょうに話す外交官で、当時ヨーロッパにおける権力者の女性たちを相手にその手腕が発揮されたとか。戦争を起こさぬようヨーロッパ中を駆け回り和平交渉を担当。実はルーベンスは女性権力者の絵を何枚も描き、その絵を交えて外交に臨んだという。当時画家として既に巨匠だったルーベンスに肖像画を描いて貰えれば権力者と雖も決して悪い気はしなかったことだろう。しかも彼女たちは皆それぞれ知的で自信に溢れ、優れた指導者であることが絵から伝わってくるところが凄い。彼女たちの存在感は宗教画の中の理想像としての女性とは質が違う。

 

 一方、宗教画は裸体ばかりなのでその写真はブログには掲載不可能であることが分かり残念(自動的に消去)。肌の色が特別きれいなのに…モデルであるルーベンスの2番目の妻はかなり年下。今回初めて知ったのは、当時女性ではプロのモデルは存在しなかったので、裸体のモデルになってくれるのは妻だけで、殆どの宗教画のモデルは彼女だったらしい。結局ルーベンスの妻をそのまま描いたら肉感的な女性ばかり...という結果になった模様。妻が変わる度に作風がガラッと変わったピカソと同じだ。
 
 また、イタリア滞在中に、ミケランジェロ等ルネッサンス絵画を随分勉強したようだ。スペインにも滞在していたし。だからルーベンスの絵は彼より後のフェルメールなどオランダ絵画の作風と違って、汎ヨーロッパ的なのだ、と初めて知った。ダリッジ・ピクチャー・ギャラリーの常設展にはベラスケスなどルーベンスに影響を与えた画家たちの絵や、オランダ絵画などもあるので、比較するのも面白い。『ルーベンスと女性』展は2024年1月28日迄。

 

ダリッジ・ピクチャー・ギャラリーのトレーラー

英語版紹介動画

  

たしかルーベンスの妻がモデルの絵

 
銀の皿を描いた絵 ルーベンスは彫刻もこなし、イタリア滞在中に随分ミケランジェロから影響を受けたとか
  
スケッチも抜群に上手い。周りの枠も手描き(拡大写真)
6か国語を流ちょうに…凄い、尊敬