友人が住む街にあるPeckhamprexで話題の映画『Barbie/バービー』(2023)を観た。ようやく行列なしの普通の状況になってきたので。『オッペンハイマー』との組合せでBARBENHEIMERと銘打って英米では同時上映。日本では両者を組み合わせ、キノコ雲をバービーの髪にしたファンによるネタ画像ですこぶる評判が悪い本作。原爆の被害に遭った人々に対する配慮は一切なし。でも元々アメリカで原爆開発の本拠地ではそのことを誇りに思っていてキノコ雲のイラスト付きTシャツが販売されている、とかつて聞いたこともある。なので、この事件には驚かなかったしどちらかと言えば「相変わらずだな…」という印象。真面目で重い映画の『オッペンハイマー』がたまたま同時上映されたコメディの『バービー』の軽さに引きずられた結果とも言える。

 

 とはいえ、『バービー』もただの「おちゃらけ映画」ではなく、それなりにジェンダー批評としてパンチが効いているので、観た後色々考えさせられ、「女の子と人形」について友人とも深く話すことになった。「容姿スタイル抜群のバービーのせいでコンプレックスを感じた」と近頃フェミニズム的に批判されているので「子供の頃バービー大好きだった」と友人は言い辛くなってきたという。私の場合はバービー人形は持っていなかったけれど、子供時代は代わりにタカラのリカちゃん人形で遊んでいた。けれど、私もリカちゃんにコンプレックスを感じることは全くなかったので、自分的にはその批判は的外れな感じがする。映画を観ている間も「そういえば私のリカちゃん人形はいつ捨てられてしまったのだろうか?」などと後悔混じりのノスタルジックな気持ちになったくらい。さて、あらすじは…

 

 バービー(マーゴット・ロビー)とケン(ライアン・ゴスリング)は、バービーランドのカラフルで一見完璧な世界で人生最高の時間を過ごしている。しかし、実際の世界に行く機会を得ると、彼らはすぐに人間の中で生きる喜びと危険を発見する…(Googleの映画紹介より翻訳)

 

 「なりたい自分になれる」バービーの中にはアメリカ大統領もいるのだが、改めて「アメリカには未だ女性大統領はいない」ことに気づいた。ヨーロッパではドイツのメルケル首相やイギリスではサッチャー首相を始めとして他二人おり、女性首相はある程度見慣れているのに。だからアメリカ大統領4人が彫られたラシュモア山がバービーランドでは全て女性に入れ替わっているのが衝撃的。一方、リアルワールドの男性優位社会ではマーテル社の取締役会議の参加者は全員男性!日本では普通のことかもしれないけれど、イギリスの会社を見慣れてくるとかなり違和感を感じる。物語の背景になるバービーランドとリアルワールドの対比でジェンダー格差を暴くグレタ・ガーウィグ監督の手法は評価できる。同監督の『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』も展開が予想外で主張もはっきりしていたし。

 

 恐らく映画『バービー』に対する女性の高評価にはかつて自分が(バービー)人形で遊んだ頃の思いも含まれている。また、所々バカバカしい場面もあるのと、バービーランドというピンクの国の描写にもちょっと引く。でも、映画を観た後に子供時代の自分と人形との関係について友達と話すという幸せな時間をくれたという意味でこの映画を観て良かった。『オッペンハイマー』の方がよりお勧めだけど。

 

 

日本のリカちゃんを紹介するのに見せた動画。こういうリカちゃん結構好きかも。