今評判の相撲ドラマ Netflixミニシリーズの『サンクチュアリ-聖域-』(2023, 江口カン監督)を観た。現在全世界のNetflixで6位の人気だという。面白くてつい毎日2話ずつ見てしまった。実はこのシリーズを知ったのはマル激5金スペシャル(動画参照のこと)。元々五穀豊穣を祈る神事である相撲の世界を日本の「聖域/サンクチュアリ」と銘打って、女性は土俵に上がれない、一日の終わりには相撲部屋の土俵に砂を盛り神聖であることを表す白紙の「紙垂(しで)」を納めるなど独特な伝統を映しだす。タニマチ先導による八百長なども含め、相撲が純粋なるスポーツではなくて、ある種のパフォーマンスであることも伝えている。さてその あらすじは…

 

 札付きのワルで高校生の小瀬 清 (一ノ瀬ワタル)は、借金による父 (きたろう)の寿司屋廃業、母(余 貴美子)の出奔による家庭崩壊が原因で荒れる毎日。ある日相撲の元大関である猿将親方 (ピエール瀧)が「相撲は儲かるよ」と小瀬をスカウトする。潰された父の寿司屋を復活させるには800万円程の金が欲しい小瀬は猿将部屋に弟子入りする。しかし、暴れん坊の小瀬(四股名は猿桜)は常識を覆す傍若無人ぶりで角界を揺るがすほどの問題児になっていく。そんな彼が宿命のライバル静内との出会い、交通事故で意識不明になった父の入院などで奮起して相撲に邁進し始めるが…

 

 相撲部屋も国技館ならぬ国技会館の土俵周りも全編セットらしいが、殆ど本物に見える。国技会館の外観は中層建なので屋根が大きく低層の国技館とは明らかに異なるのだが、CGなのだろう。流石資金に余裕があるNetflix。もしこれが映画だったらそこまでセットに予算を割けないし、マル激でも指摘されているように無名の俳優 一ノ瀬ワタルが主役を張ることもできなかっただろう。同じくマル激によれば、国技館も歌舞伎座も非日常空間を演出するために「お祭りの縁日をモチーフとして使っている」と聞き、初めて合点がいった。

 

 戦後の建物の中で日本の伝統芸能に関わる空間は大講堂の室内なのに柱を抜いた屋根を吊り下げることで特別な空間を演出することが多い(国立能楽堂、国技館など)。国技館の場合その屋根は伊勢神宮内宮の千木と鰹木をモデルにしている。その屋根の下でのパフォーマンスには神が宿るということなのだろう。でも、そもそもパフォーマンスと呼ばれるものは演者が特にトランス状態、つまりゾーンに入った時は世界中どこであっても神に繋がる瞬間である。何十回、何百回と繰り返した練習や鍛錬の結果としてのパフォーマンス。観客はその時雷に打たれたような忘れられない経験をする。「人前に出て、それまで練習してきたパフォーマンスを披露することは特別なこと、十分誇っていい」と、かつてハウスメイトが言った言葉を思い出した。

 

 

『サンクチュアリ』は42:50まで。その後は是枝裕和監督『怪物』ネタバレあり。