フランス人ピアニスト リュカ・ドゥバルグのリサイタルが6月22日にOxford Streetに近いウィグモアホールで開かれた。去年と2019年にも同じくウィグモアホールで彼のリサイタルが開かれている(2019年の記事はこちら)。去年のリサイタルは気づかなくて今更ながら残念。2019年の時よりも席は埋まっていて、4分の1くらいの空席率だった。徐々に評判が上がって、多分昨年のリサイタルも良かったのだろう。今回はスカルラッティのソナタ4曲、ショパン3曲に最後はチャールズ-ヴァレンチン アルカンという組み合わせ。2019年はスカルラッティのCDを売り出したばかりだったので半分がスカルラッティだった。曲目は以下の通り。
- DOMENICO SCARLATTI
1685-1757
- Sonata in A Kk208
- Sonata in A Kk24
- Sonata in D Kk491
- Sonata in D minor Kk141
- FRYDERYK CHOPIN
1810-1849
- Ballade No. 2 in F Op. 38
- Prelude in C sharp minor Op. 45
- Polonaise-fantaisie in A flat Op. 61
------------------INTERVAL-------------------
- CHARLES-VALENTIN ALKAN
1813-1888
- Concerto pour piano seul Op. 39 No. 8
- Allegro assai
- Concerto pour piano seul Op. 39 No. 8
(アンコールは「子供のための…」以外聞き取れず。ウィグモアホールのWebsiteにアップされたら追加します。)
リュカ・ドゥバルグの音の綺麗さが際立つ構成で心洗われるリサイタルだった。スカルラッティは前回とは違い4曲で丁度良い長さ。ショパンのバラード2番は聴き慣れているはずなのに、何か違う曲のように感じたのは彼の解釈が個性的なのか? 彼はショパンも得意なのだと知った。とはいえ最後の今回のシャルル・ヴァランタン・アルカンが圧巻、難曲でリュカのヴィルトゥオーゾとしての現在が反映されていた。8年前のチャイコフスキー・コンクールのとき、11歳から始め中断もありピアノ歴が短いリュカに審査員から「毎日最低4時間はピアノを弾いて演奏技術を高めてください」とアドバイスを受けていたことを思い出した。ちゃんとこの指導に従い順調に成長してきたのだろう。しかもリサイタルでリュカはシャルル・ヴァランタン・アルカンについて長く解説してくれた。特に彼がフランス人だからかもしれないけれど…最後列で聞き取れたのはアルカンがフランスのロマン派作曲家であること、ショパンとリストの友人であることなど。こんなことなら、インターバル時に前列の空席に移動すれば良かったかも…と少し後悔。こうやって素人の観客に自国では知られた名曲を紹介するのも音楽家の大切な役割だと思う。
2019年のリサイタルとは違い今回は豪華なパンフレットはなく、曲目を紹介したフライア一枚だけ。それでも、毎年ウィグモアホールのような一流ホールでリサイタルを続けていったらいずれはチケットの入手も難しくなりそう。自国の政治的影響を受けて招待されなくなったロシア人の演奏家たちに比べると、羨ましい限り。今丁度モスクワでチャイコフスキー・コンクールが開催中だが、審査員は大幅変更、参加者も少なく追加募集もかけたと聞く。しかも、今年はフランスのmedic TVが全世界向けに放映していないのが痛い。これでは入賞者のヨーロッパでの将来的な演奏活動に陰を落とすのでは。しかも、昨日は準軍事組織ワグネルがモスクワに向けて軍を進行中でモスクワ市民に外出禁止令まで出たと聞き、コンクールの開催が危ぶまれたばかり。今日になって事態は収集されたそうだけれど。今年は開催せずに延期すべきだったのではないか。