昨晩『マキシム・ヴェンゲーロフとオックスフォードフィルハーモニー』によるコンサートのためにバービカンホールに行った。マレイ・ペライア演奏ベートーベン・ピアノコンチェルトシリーズ以来久々のバービカン。クラシックコンサート自体ほぼ一年ぶり。そもそもこのコンサートはマキシム・ヴェンゲーロフの大ファンである大家さんの友人が教えてくれたもの。ロシア繋がり。2021年だったかドミトリー・マスレエフがモスクワでユーリ・バシュメット主催のコンサートに参加した時、ヴェンゲーロフも出演すると聞き、サイトと放映時間を彼女に連絡したのが発端だった。彼女が連絡をくれた10日前でもまだ22ポンド(約3500円)の2階席チケットが買えたので私も参加することにした。

 

 今回のコンサートはギリシャ人主任指揮者であるマリオス・パパドポウラスがオックスフォードフィルを創立してから25周年記念。普段はオックスフォードが本拠地だが記念としてバービカンで演奏会を開催したとのこと。オックスフォードではいつも満席なのに、ロンドンではオックスフォードフィルがあまり有名ではないから2階席に余裕があったらしい。ヴァンゲーロフは定期的にオックスフォードフィルと共演してきたので友人は「いつもはオックスフォードに行くけれどロンドンに来てくれて助かる」とのこと。ヴェンゲーロフはあまり有名ではないオーケストラでも気にせず、夫人の出身地であるルーマニアのオーケストラともよく共演するとか。ロイヤルアカデミーでも教えているからか、2階席には学生さんも多かった。曲目は以下の通り。

 

John Rutter A birthday greeting to celebrate the OPO's 25th Anniversary

Felix Mendelssohn Violin Concerto in E minor  (休憩)

Johannes Brahms Symphony No 2. 

 

 ジョン・ラターはロンドン出身、合唱曲の作曲で名高い。この日のために特別にオックスフォードフィルの演奏用に作曲した「戦争反対」の曲だとか。初演奏なのに耳慣れた旋律もあったので親しみを感じた。メンデルスゾーンのバイオリン協奏曲はヴェンゲーロフは「7歳の頃から弾いている」ので余裕の演奏。コンクールなどで聴く演奏とは全く異なりリラックスして音楽を楽しませてくれた。彼の演奏はポジティブな印象で明るい気持ちにさせてくれる。難曲でも軽々と楽しそう。とはいえ、ヴェンゲーロフは2年前5歳から演奏活動を始めて40周年記念だったのに、パンデミックで全ての演奏会が中止という憂き目に遭っている。しかも昨年秋の演奏会はエリザベス女王崩御で国葬に重なり中止。次の演奏会はチャールズ国王の戴冠式と重なり開催が危ぶまれているという。イギリスとはここ数年相性が悪いらしい(全て大家さんの友人情報)。

 

 大いに盛り上がったヴァイオリンコンチェルトの後にも関わらず、ブラームスの協奏曲2番はじっくり聴かせる堅実な演奏。休憩前のアンコールは「バッハのダブルコンチェルトを弾きます。全曲演奏するわけじゃないから安心して」とヴェンゲーロフ。オケの後部に座っていたバイオリニスト(元コンサートマスターか?)とオケとの共演。演奏後ヴェンゲーロフは後部の空席に座ってお茶目な面を見せてくれた。でも、今晩の主役がオックスフォードフィルであることを重点に置いた選曲で彼の謙虚な姿勢に好感が持てる。ヴェンゲーロフはまだ40代だけれど、師はロストロポーヴィチでお爺さんと孫のような年齢差があったとか。ロストロポーヴィチを通じて彼の作曲の師であるショスタコーヴィチからのロシア音楽の伝統を受け継いでいるそうだ。

 

 大家さんの友人はこの日のヴェンゲーロフの服装を気にしていた(彼の服装はかなり個性的らしい)。「前回オックスフォードの時は明るい青のスーツに青い靴だったけど」とか。私もマスレエフの演奏会の時は「今日は紺のタキシードかしら」とか、特に花束を渡す場合には花の色がその日の服を引立たせるようにしたいのでとても気になる。どこもファンは似たようなことを考えるようで 笑。ただ、来月初めのマスレエフのウィーン学友協会でのコンサートには花ではなくモーツアルトチョコレートにするつもり。元は2年ほど前の予定されていたコンサート。パンデミックで延期されたのに、払戻なしでチケットはそのまま有効という変わったシステムだ。チケットを買った当時はまさかロシアが戦争を始めるなんて思ってもみなかったけど。パンデミックで次々にコンサート中止が報じられる中、このコンサートの延期は最後の心の支えだったので行くことにしている。ウィーン学友協会なんて一生に一度の訪問だろうし。

 

メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲 ヴェンゲーロフのYoutubeサイトから

 

 

演奏中の写真撮影は禁止なので演奏前。バービカンは席の色が列によって違う。