地元のハックニーピクチャーハウスでアリ・フォルマン監督の『アンネ・フランクと旅する日記/Where is Anne Frank』(2021)を観た。在宅リモートワークをいつもより早くに始めて夕方の回に間に合わせたところ、私がチケットを買うまで無観客だったらしく中サイズのスクリーンから小サイズのスクリーンに移されてしまってガッカリ。コマーシャルの途中でも誰も入って来ず結局最後まで私一人だった。映画館でたった一人というのはあまり良いものではない。暗いし、霊感の鋭い友人はゴーストを視たことがあるとか。でも、映画の本編が始まったら、話に引き込まれて一人であることは完全に忘れ去った。さて、そのあらすじは…
映画は、アンネ・フランクが日記の宛先にした架空の友人であるキティの旅を追う。熱く燃えるティーンエイジャーのキティは、アムステルダムのアンネ・フランクの家で目を覚まし、まだアンネは生きていると信じて現代ヨーロッパで彼女を探す旅に出る。キティは現代の世界にショックを受ける一方で、アンが残した数々の影響にも巡り合うが…(IMDbより翻訳)
アニメーションで戦争を描く場合、生々しさが軽減されるので見るのが苦痛になったりしないのは助かるし、子供たちが観るにはこのくらい現実味がない方がショックが少ないかもしれない。ただこれまでホロコーストに関するドキュメンタリーや実写の映画を観ているので、かなりマイルドになっている点が少し気になった。現実との相違では、特に「東に行く列車」。『戦場のピアニスト』でもユダヤ系の人々が詰め込まれて満員だった筈なのに、あたかも列車で旅行にいくような描写だったのは疑問。(それとも、私が何か誤解しているのだろうか?) 次に、ナチスドイツの将校たちが仮面を被った巨人のように描かれている点も気になった。一方、この映画で着眼点が優れているのは、第二次世界大戦時のユダヤ系の人々と現代の難民の人々とを並行して描くことで、彼らのよく似た立場を顕にしているところ。移民による不法占拠(Squatting) やグラフィティだらけのアジト、デモによる抵抗など、現実感のある描写は説得力がある。それでもファンタジー映画の中に現実を交ぜるのは相当難しいようだ。あと一歩で名画になったのに残念。
でも、もしアムステルダムに行く機会があったら、アンネ・フランクの家に行きたいと強く思った。
予告編 日本語字幕付き