スティーヴン・スピルバーグ監督の『レディ・プレイヤー1/ Ready Player One 』(2018)をオンラインで観賞。ある優秀な学生が「メタヴァースと建築についてエッセイを書きたい」とのことで、年明けに500ワードの要旨を送ってきたからだ。Facebookが社名をメタに変えたように仮想のメタと世界のユニヴァースの組み合わせで「メタヴァース」。実はメタヴァースについての知識に乏しい私が指導教官にならないよう、逃げまくっていたのだが、結局は担当になってしまい申し訳なく思っている。で、一夜漬けで「メタヴァース」の情報をオンラインで集めたところ、その語源となった小説『スノウ・クラッシュ』とその世界を描写したベストセラー小説を見つけ、彼に読んでみるよう勧めた。後者はスピルバーグ監督が映画化した『レディ・プレイヤー1 』(アーネスト・クライン原作および脚本)。でも推薦した以上自分も見ておかなければ!と眠い目を擦り、寝落ちしながら何とか最後迄観賞した。そのあらすじは…

 

  時は2045年。地球はカオスと崩壊の瀬戸際にあったが、人々はジェームス・ハリディ(マーク・ライランス)が創作したヴァーチャルリアリティーの世界である「オアシス」に救いを見出だしていた。ハリディは死に際して、オアシスの中に隠されたデジタル化されたイースターエッグの最初の発見者に自分の莫大な財産を渡すこととオアシスの支配者になること確約。そのコンテストに若きウェイド・ワッツ(タイ・シェリダン)が参加する。謎と発見と危険が隣り合わせの幻想的世界の中で現実からかけ離れた宝さがしを通じて、 ウェイドは思いがけずヒーローになっていくのだった ( ロッテントマトより引用)。

  

  建築的には現実世界でウェイドが住むスラム街がインパクト充分。スラムというものは大抵 DIYで建てた家の集まりなので、せいぜい2階建で高層にならないのが普通。しかしこの映画では10階建てくらいの鉄骨造の骨組みに車や人が住めるトレーラーハウスなどを挿入してある。ウェイドは地上に降りるために消防署のようなポールを使う。階段やエレベーターはないから。でも登るときどうする?若くて体が軽くないとポールを上昇するのは無理では?同時に「人々は問題解決を諦めるようになった」世界は実は既に内戦状態の国などに実在しているので、ドキュメンタリー作品などで既視感もある。

 

  一方、ヴァーチャルなメタヴァースでは透明な高速道路などあり得ない設定の数々。でもメカゴジラや大友克洋監督『AKIRA』の金田バイクに終いにはガンダムまで出てきて、ちょっと日本に媚びている感じ。スタンリー・キューブリック監督の『シャイニング』のオマージュもある。音楽も1980年代ものが多く、対象年齢層が高めなのか?それにしては話自体がおもいっきり青春物なのでちぐはぐに見える。同時に近頃の3DCGは髪の毛を随分と上手く表現できるようになってきた、と感心した。原作があるとはいえ、あの年齢で最新のヴァーチャルリアリティを駆使したこんなに元気一杯な映画が撮れるとは、スピルバーグ監督はまだまだやる気満々。

 

予告編

オアシスとは