Hackney Picturehouseで『Dune/デューン 砂の惑星』(2021)を観た。この秋何回か月曜割引の映画館に行ったけれどほぼ満員だったのは初めて。他の映画はどれも観客が数人だったのに。ただ、この映画は前後編の二部作なので、観終わった後「ここでお終いか〜全然話が進んでいない」と若干がっかりしたのでブログに書くべきかどうか迷っていた。でも、思い返すと2時間半余と長い映画なのに緊張感が続くし、砂漠の景色は臨場感たっぷりだし、セットや衣装デザインは上手いし、キャスティングも文句なし、と完成度が高い作品なので紹介したい。ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督作品では『ブレードランナー 2049』『メッセージ』などSF作品が印象的。縦長の宇宙船も何処かで見た覚えがある、と思ったら『メッセージ』のそれと似ている。コンクリートの塊のような宇宙船とか、この監督は視覚的にも「絶対空は飛べないだろう」という常識を覆す意外性のあるデザインが得意だと思う。さて、その途中までのあらすじは…

 

 遥か彼方の未来、レト・アトレイデス公爵は宇宙を統べる皇帝の命で砂の惑星アラキスの管理を受け入れる。しかし、アラキスで採れる全宇宙で最も価値ある物質で、長寿と思考レベルの拡張をもたらす「スパイス」と呼ばれるドラッグを巡って星の元々の管理者との間に対立が生じるよう仕組まれたものだった。非凡な能力を備えた公爵の息子ポールはその陰謀の渦中に巻き込まれていく…

 

 アラキスに行く前にポールが住んでいた家とアラキスで使われた荒涼とした建物との対比が印象深かった。前者は中東で見られるような文様を施した、直射日光を妨げるようなルーバーが窓にあって、控えめだが製作工程が複雑そうな装飾が心地よさを演出している。一方、アラキスでは砂漠の中にあるので外見はピラミッド風だが、内部は1960年代に流行ったブルータリズムのようなコンクリート打ち放しで開口部には窓さえない。自然環境の厳しさが反映されたかのよう。ディストピアが定番のSF映画の場合、人が住む部屋は概して殺風景だし、時に殺伐とした印象さえ与える。古くは『Ghost in the Shell-攻殻機動隊』の草薙素子の部屋や『エヴァンゲリオン』シリーズの綾波レイの部屋。近年では『ブレードランナー 2049』も。彼らがサイボーグやレプリカントで人ではないことを強調したいからかもしれないけれど。空中の楼閣『オブリビオン』はスタイリッシュなデザインだったが心地いいかどうかは疑問。例えば、アントニオ・ガウディが設計した壁が曲がりくねった住宅(カサ・ミラ)は住民にとって「予想以上に心地よく住みやすい」と読んだことがある。実在する牛田-フィンドレイ設計のトラスウォールハウス(1993)のようにもっと丸っこいデザインやソフトでふわふわした素材を使った未来の部屋が想像の産物である映画の中にあってもいいと思うのだが…カッコよく見せるのが難しいのか。話が脱線してしまったけれど、『デューン 砂の惑星』後半のドラマ展開に期待大。