昨夜はたまたま流していたYOUTUBEでYOASOBIのMV「群青」を観て泣いてしまった。ヒット曲「夜に駆ける」のMVアニメーションもその繊細なタッチとメロウな色使い、衝撃的に残酷な表現が忘れられないけれど、「群青」の影絵パペット(?)アニメーションも絵自体は繊細なのに動きの無骨さのせいで心に直接その思いを投げ掛けてくる。そしてこの歌詞。自分の経験と重なることは言うまでもなく、ストーリーが素晴らしい。画家になろうとしている若者の心を描写していて、私は絵が上手かった幼馴染を思い出した。

 彼女は小学校に上がるか上がらないかぐらいの頃から飛び切り絵が上手かった。小学一年生の頃、私も「先生の絵」で表彰されたことがあったので、「自分も絵は上手い」と天狗になっていた(皺までリアルに描きすぎて、モデルだった女性担任の機嫌を損ね図工の成績は3だったというオマケ付き)。ところがその天狗の鼻は幼馴染が筆ペンで描く活き活きとした可愛らしい動物達の絵で、圧し折られた。一緒に映画を観た後に夏休みの宿題の為に描いた絵でも、構図といい(今でも覚えている)クレパスのタッチといい、自分より数段上手い彼女。「完敗…才能とはこういうことか」と痛感した。彼女のお母さんも油絵を描き、紙粘土でお人形を作っていて、絵の具の匂いが漂うクリエイティブなお家に遊びに行くのが楽しかったことを思い出す。時が経ち大学進学の際、母がふと彼女の進路に触れ「美大じゃなくて法学部に行くんだって」と言った。母だけでなく私も意外だった。「あんなに才能あるのに勿体ないわね。」同感だった。それでも、年賀状では驚くような素敵な絵。就職して数年経ったある日今度は彼女がアメリカに留学したと聞いた。「小型航空機の免許を取った」らしい。帰国後その快挙を祝いたくて久々に会った時思わぬ告白をされた。「実はイラストを描く仕事がしたくてデザイン会社受けたんだけど、落ちちゃってね。それでアメリカに行ったの」と。「面接で、”貴方は美大に行っていない。どうやってそのハンディを克服するのですか?”と訊かれて答えられなかった」と言う。当時も返す言葉が無かったし、今でも無い。美大に関する漫画を読んだ今ではその厳しさが分かるので、簡単に「面接官はヤル気を見たかっただけだよ」とも言えない。でもその代わり、自分が教えている学生達には言う。「自分に才能があるかどうかなんて迷っている前に建築を好きになったフリをしてみろ。”好き”という気持ちも才能だから。建築は奥が深くて面白いからそのうち本当に好きになってくるから」と。

 

 今でも切に願う。それでも彼女が絵を描き続けていることを。

 

この曲の主題となった漫画『ブルーピリオド』(作 山口つばさ)のアニメも今年中に始まる。楽しみ。