コロナ禍を搔い潜って日本に一時帰国したものの、自主隔離後一週間で一年分の事務処理や今後の手配や払込他全てをこなすために忙殺された。イギリス帰国後はいつもより長いクリスマス休暇の影響でオフィス仕事は溜まっているし、大学では連続講義が待っている上に無謀にも「パンデミックと都市」という新しいテーマも含めてしまったため、両方の仕事で朝から晩まで土日含めて休みなし…おまけに去年一番だった学生がなんとオックスブリッジの「修士過程に進学するため推薦状を書いて欲しい」という。「何故私なんだろう…」と思いつつ(単に2年連続で教えたのは私だけだったから)泣く泣く引き受けたものの、当大学指定の「推薦状の書き方」に従うのは論文要旨を書く以上に難しいではないか。「今年提出される推薦状を書いている人々の中で私が一番英語ができないに違いない」という恐怖にも襲われ、メール受信後10日以内に提出という厳しい条件で今だに四苦八苦。とうとうオンラインで映画を観る時間も全くないままに一月が終わろうとしている。

 

 一方、一時帰国で久々にブリティシュエアウェイズを使ってその倹約ぶりにびっくり。そもそも機内誌は無いし、機内映画の数も全日空やエールフランスと比較して少なめな上に、現在評判の高い映画や過去の名作も少ないので、ほとんど観てしまっている。その中で前回のブログでも触れた通り行きの便で観た『ジョジョ・ラビット』が良かった。あらすじは…

 

 物語の舞台は、第二次世界大戦下のドイツ。10歳の少年ジョジョは、空想上の友達であるアドルフ・ヒトラーの助けを借りて、青少年集団ヒトラーユーゲントの立派な兵士になろうと奮闘していた。しかし、心優しいジョジョは、訓練でウサギを殺すことができず、教官から〈ジョジョ・ラビット〉という不名誉なあだ名をつけられる。そんな中、ジョジョは母親と二人で暮らす家の隠し部屋に、ユダヤ人少女エルサが匿われていることに気づく。やがてジョジョは皮肉屋のアドルフの目を気にしながらも、強く勇敢なエルサに惹かれていく──。(映画公式サイトより転載)*

 

 戦争映画をコメディにするのはかなりハードルが高いと思う。その上この映画はドイツにおけるユダヤ人の迫害が主題。人種差別をコメディにする場合『ゲット・アウト』のように監督自身が差別される側の人だったりすることも多い。で、この映画もオーストラリア出身のタイカ・ワイティティ監督は、父方はアボリジニ系だが、実は母方がユダヤ系。しかも、なんと主人公の少年ジョジョの妄想内友達であるヒトラーはワイティティ監督自身が演じていた。以降ネタバレになるけれど、ホロコースト系コメディの傑作『ライフ・イズ・ビューティフル』と似て、本作もスカーレット・ヨハンソン演じる、粋で素敵な主人公の母親ロージーはナチに殺される。しかも、かなり重い描写の仕方で。それでもユダヤ人少女エルサとの交流で次第に本当の状況を理解していきながらジョジョは母の喪失をエルサとともに乗り越えていく。どうもロージーのことが好きだったらしいサム・ロックウェル演じるヒットラーユーゲント教官がジョジョとエルサを守ってくれる。ロージーや教官のように命賭けで密かにユダヤ人を守ろうとしたドイツ人も居たのだろうと思わせ、観た後に心が温まる。

 

*http://www.foxmovies-jp.com/jojorabbit/introduction/