BBC iplayer で『Railway Children / 若草の祈り』(1970) を観た。特に予備知識無しでIMDbの評価が7.3と悪くないので、気晴らしに…と思ったら、予想外に心温まるストーリーで清々しい気持ちにさせて貰った。主人公が子供達なので、彼らの発想が子供っぽく、しかも時に都合良く話が進みすぎのところはある。でも、健気な三姉弟をつい応援したくなるし、蒸気機関車が半分主役のような映画なので、子供だけでなく昔子供だった人たちのノスタルジアも誘う。さて、あらすじは…

 

   裕福なウォーターベリー家クリスマスは外務省勤務の父親がどこかに連れ去られて一変。ロンドンの豪邸から片田舎のヨークシャーのコテージに引越を余儀なくされる。ネズミが走り回るうらぶれた家だったが、三姉弟は近くにある鉄道駅や駅員、蒸気機関車、町の人々など新しい世界との出会いを楽しんでいた。ある日蒸気機関車の食堂車にいつも座っている紳士に手を振ったことがきっかけで、彼と知り合いになる。丁度その頃心労が祟り母親(ダイナ・シェリダン)が倒れ、家族は飢えで追い詰められる。長女のボビー(ジェニー・アガター)は何とかこの困難を打開するために紳士に助けを求める手紙を書くが…
 
   アッパーミドルクラスの家族が突然労働者階級の田舎町に投げ出された状況を描写。自分たちの生活が困窮している上に監獄にいる父の安否も分からないのに、母子は困っている人を助けていく。行き倒れのロシア人とフランス語で会話できる人が町中で母親だけだったという事情もあるけれど。母親の出身階級ならではのノブレス・オブリージュと子供たちには父親逮捕の事実を隠して全てを背負う彼女の気概が印象的。ヴィクトリア時代の刑務所なんて敢えて囚人たちに殺し合いをさせるような所だし、運良く出所できたとしても精神的に壊れてしまったらもはや元の人物のままではない可能性もある。でも、この悲しみを抱えながらも、出会った人たちを笑顔にしていく英国人家族の強さが素敵。結末もハッピーエンドで爽やか。ヴィクトリアンの児童文学作家イーディス・ネズビットによる原作も評価が高く、何度か映画化やテレビドラマ化されている。長年英国映画ベスト100にリストされているのも納得できる。

 

日本語版は見当たらないので英語版予告編