アンドリュー・ニコル監督のハリウッド映画デビュー作『ガタカ』を久々にテレビ画面で見た。既に何度か見ているが、スタイリッシュな上にポジティブな内容で後味が良いのでもう一度見てみることにした。あらすじは人の能力や将来の疾病可能性や寿命が生まれた時のDNA検査で全て予言でされてしまう近未来。自然の妊娠出産で生まれたヴィンセントは心臓病の持病をもち優生学的にInvalid(病弱)というレッテルを貼られて、あらゆる面で差別を受ける日々。でも、彼の夢はValidのエリートしか選ばれない宇宙飛行士になること。諦められないヴィンセントは、水泳の元金メダリストで交通事故で半身不随で車いす生活のユージーン(ジュード・ロウ)と入れ替わることで、宇宙飛行士への道を追求していく。何度も繰り返される血液検査、頭髪検査、指紋判定をくぐり抜けるための涙ぐましい努力には少し辟易とするが、生まれつきの弱点を克服しようと努力する主人公、彼を助けるユージーンとラマール医師、恋人のアイリーネ(ユマ・サーマン)そしてライバルの弟など、人間関係もうまく描かれている。特にこの頃のジュード・ロウは若くて輝いている上に、水泳競技で負けたことから自暴自棄になるユージーン役がぴったり。初めてこの映画を見たときは、予想外の結末に暫く呆然としてしまったことを思い出した。

 さて、アンドリュー・ニコルは以前『タイム(In Time)』でも書いたように、現存する建物のうちで未来の設定でも通用するデザインを選んでおり、この映画に出えくる未来的な建物は建築関係者からも評価が高い。例えば、主人公のビンセント(イーサン・ホーク)の働いているGattaca社の建物はMarin County Civic Centerで、フランク・ロイド・ライト晩年の作。ボールト型の天窓から吹き抜けを通じて落ちてくる光が印象的。車がアプローチしていく、窓がポツポツ開いたビルはニューメキシコ出身の建築家であるアントイン・プレドック設計のCLA Buildingでカリフォルニア州立工科大学、パノア校の校舎(Portilla,2012)。しかし、DNAを暗示する螺旋階段が印象的なユージーンの家はどこなのかははっきり分からなかった。

それにしても、ニュージーランド出身のニコル監督は階級差別をテーマにすることが多いが、ロンドンで10年生活したときに余程印象的なことが沢山あったのだろうか、と気になった。


Portilla, Daniel."Films & Architecture: “Gattaca”" 22 May 2012. ArchDaily. Accessed 08 Mar 2015.